クラシック音楽というジャンルは、何も古い音楽とか過去の音楽というものではなくて、西洋の伝統音楽というふうに捉えるべきでしょう。現代でもクラシック音楽を作曲している人はたくさんいます。新しいクラシック音楽が生まれているという自覚はないかもしれませんが、映画やCMなどで確実にそれを耳にしているのです。とはいえ、自分も現代のクラッシク音楽なんて考え方は、あまり持っていなかったのですが…。
交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」
作曲:ヘンリク・ミコワイ・グレツキ(Henryk Mikolaj Gorecki)
第一楽章 Lento
第二楽章 Lento e largo - Molto Lento
第三楽章 Lento - Lento e largo - Molto Lento - Largo ben tenuto
グレツキ/交響曲第3番「嘆きの歌の交響曲」
オーケストラとソプラノ独唱で構成されていて、第一楽章では15世紀に書かれた哀歌、第二楽章ではゲシュタポ収容所の独房の壁に書かれた言葉を歌い、第三楽章では民謡が歌われています。冒頭はカノン形式から始まり、そのメロディーが最後にも表れ、曲全体の統一をとっています。
グレツキの交響曲第1番、2番と前衛的な現代音楽の要素が多分に含まれているらしいのですが、伝統的音楽形式を踏襲した第3番が世界的ヒットとなり代表作となっているのは、グレツキが敬けんなカトリック教徒だということが大きな要因となっているようです。
グレツキの「MISERERE(ミゼレーレ)」という歌曲集はまさにミサ曲集のようです。
グレツキ:ミゼレーレ
グレツキは、ショパンの祖国・ポーランド出身の作曲家です。
ポーランドは悲しい歴史が多い国で、記憶に新しい第二次大戦中のアウシュビッツ(ポーランド語ではオシフィエンチムと発音するらしい)から、遡ると、中世には再三他国により国が分割され、18世紀後半には一度地図から国名が消滅しています。第一次大戦後、ベルサイユ条約によって国家が回復したものの、ナチス・ドイツのポーランド侵攻とソ連軍の侵略で再び消滅し、第二次大戦後に以前よりも西方へ大きく位置を変えた形で復活、それが現在のポーランドなのです。
戦後の社会主義時代では旧ソ連の強い影響下にありましたが、冷戦終結後の現在では完全な民主国家となっています。
余談ですが、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の映画「地下水道(KANAL)」「灰とダイヤモンド(POPIOL I DIAMENT)」「鉄の男」「大理石の男(CZLOWIEK Z MARMURU)」などを見れば、第二次大戦から社会主義時代のポーランドをよく知ることができるでしょう。ポーランドはいかに他国から利用され、それに対しポーランド国民は立ち向かい、しかし無残にも押さえ込まれてしまう…ポーランドの悲しみ、それはショパンの音楽の中、あるいは「悲歌のシンフォニー」の中にたくさん詰め込まれているのかもしれません。
交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」、そこにはもしかしたら新しいものは何もないのかもしれませんが、深くて長い歴史が秘められているのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿