2011年9月29日木曜日

ひととのつながり

 

どんなに好きでも最後は別れるんです。どちらかが先に死にます。人に逢うということは必ず別れるということです。別れるために逢うんです。だから逢った人が大切なのです。

 

瀬戸内寂聴さんのお言葉。決して斬新なことではないし、似たようなことはこれまでに聴いてきたはずであるのに、何度も何度も心に響いてくる。それは、いかに自分が人との関わりを粗末にしているかということ。とはいえ、“別れるために逢う”なんていう気持ちには、なかなかなれるものではない。それも自分の修行が足りないだけなのかも・・・

ビートルズのハロー・グッドバイ

英語が堪能でなくとも、その意味は何となく分かる。なんで君はサヨナラといって自分はコンニチハというのか─、聴いた当初は単にシニカルな意図しか感じ得なかったものだが、あらゆるフィルターを通して聴くに至ると、もしかしたら“別れるために逢う”ことを歌ったものなのかと思ってしまう。

 

ある雑誌で、オノ・ヨーコが次のように語っていた。

─今、私たちが何をすべきかといったら、滅びてしまうか、そうでなければ、生きて「希望の路」を歩くのか、どちらかでしょう。結局、それは生と死の境目だと思います。「生」を共有し、ともに生きていくためには、「希望の路を」歩くしかないのです。─

(※美術手帳2011.09/第8回広島賞受賞記念 オノ・ヨーコ展「希望の路」についてのインタビュー抜粋)

悲劇的な別れを経験してきた重みを感じる。この重みを共有しながら、ウォークマンで♪ハロー・グッドバイを聴きつつ、そして「希望の路」をひたすらランニング─。結局、ひたすらランニングするということは、ひととのつながりを無視した行為なのか・・・


2011年9月14日水曜日

Earth Mountain by Wolfgang Muthspiel 4tet

 

Earth Mountain

(Material Records, 2008)

Wolfgang Muthspiel(G)
Jean-Paul Brodbeck(P,Syn)
Matthias Pichler(B)
Andreas Pichler(Ds)

October 15-18,2007,Austria

 

ギターのウォルフガング・ムースピール以外、他のメンバーをほとんど知らないカルテットではあるけれども、ギターのみならず、トータルとしてのサウンドが素晴らしいと、昨日一昨日、バスの中で本を読みながら聴いていて、その良さを再発見したアルバム。

ディストーションからクリアトーン、アコースティックな音まで、あらゆるギター音を巧みに他の楽器の音に絡ませながら展開する、あくまでギターが主役の構成、しかしながら、聴こえてくるのはカルテット、たとえそれがギターソロであってもだ。

ムースピールが奏でる音、トーンというのは非常に気持ちがよいもの。音が重厚でしかも温かみを感じる。高音域でさえも分厚く感じる。それが故、イヤフォンで直に音を感じ取ると、体に充満している水分がすべて震えるような感覚となり、非常に心地よい気持ちで、読書も進む。

ただ、あまりのメロディーの良さで、読むことよりも聴くことに集中してしまうことが難点。自分の場合、5曲目の♪Sistahが鳴り出すと、完全に視覚を無視して聴覚に集中、その曲が鳴り止むまで焦点が合わない視線のまま、ただ書物を手にしているだけだった。

ながらで聴くものではないな、これは、と思い至り、スピーカーから改めてこのアルバムを聴いてみる。ウォークマンで聴いていたほどでもない。当然、雑音をシャットダウンしなければならない、そしてまた、読書という要素も重要なのか…、そう思ったのは、なかなか集中できない気持ちから。

自分は本に集中するためにイヤフォンをしているのではなく、音楽を聴くために本を手にしているのかもしれないという、新たな発見。

様々な感覚を与えてもらった。





Earth Mountain
Material Records

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