2011年8月25日木曜日

真夏のコバケンスペシャル YOMIKYO SUMMER FESTIVAL 2011

2011年8月24日(水)19時開演

サントリーホール

指揮:小林研一郎(読響特別客演指揮者)

ピアノ:金子三勇士

演奏:読売日本交響楽団

《リスト生誕200年記念》

リスト/交響詩「前奏曲」

リスト/ピアノ協奏曲第1番

《マーラー・イヤー・プログラム》

マーラー/交響曲第1番「巨人」

 

A席、2階、LD3列8番席。やや右斜め下にステージを眺める位置。演奏者すべてを見渡すことができる。

ほぼ定刻通り、使い古されたタクトが振り上げられた。

まったくの「巨人」目的であったため、待ち構えていた耳には予想外のメロディーが。後からそれはリストの作曲によるもの知る。しかもかなり有名だということで、ウィキペディアなどを引いてみると、ナチスがイベントなどで盛んに流した曲だとか。正負の背景など気にすることなく、その美しく堂々たるメロディーには感服。むしろ背景など知らずにこのような素晴らしい音楽を堪能できたことが幸運だったという思い。演奏も完璧。

前奏曲が終わると、ピアノが設えられた。やはり「巨人」目的であった自分には、意表を突かれたそのピアノ。見慣れない男性ピアニスト登場。奏でられ始めたその音色から、リスト的な響きを感じ取ることはできたものの、やはりそれがピアノなに協奏曲であるのか知り得なかった。

後にそのピアニストは金子三勇士(みゆじ)、日本人の父とハンガリー人の母をもつ21歳の期待の新鋭だと知るに至る。そして、その曲はリストのピアノ協奏曲第1番、つまりは、リスト生誕200年とマーラー没後100年を意識したプログラムであった。

ピアノの音はあまりにも美しく華麗すぎて、強烈な眠気に襲われる。気がつけば強烈なカーテンコールで満員の会場が揺れていた。半ば意味がわからないまま、流れに身をまかせつつ、心地よさに大いに感謝しながら、カーテンコールに参加。若手の有望株の今後に期待しよう。

ここで15分の休憩。

「巨人」目的であった自分、いよいよ期待通りのメロディー。静寂から始まるその第1楽章は演奏も鑑賞もかなりの難易度。これは恐らく、指揮者マーラーが演奏者の技量と聴衆の耳を確認するために作曲したに違いない、そういう思いで聴いていた。初演は芳しいものではなかったというこの「巨人」、自分のような凡人にとってこのメロディーを捉えるためには、数度聴かねば無理だと実感。いまでこそ存分に堪能し得る1・2楽章だが、その当時の初演に聴いたのであれば、やはり、難解という思いだけであっただろう。

3楽章の「グー・チョキ・パーで、グー・チョキ・パーで、なにつくろう、なにつくろう・・・」のメロディーで、ようやくあらゆる思考が消え去り、純粋に音楽そのものを聴くに至る。全体的にゆったり目のこの「巨人」においては、まさにこの3楽章がはまり箇所だったような気がした。

そしてやはりこの第4楽章は非常に気持ちがいいものだと確認した。どんなに小難しい前置きがあっても、やはりここを聴けば、素晴らしきかなこの巨人、となってしまう。若干スロー過ぎはしないかという不満もあったが、そんなものを吹き飛ばすくらいの大エンディング。70を超えたとは思えない若々しいその指揮ぶりをみると、やはり炎のコバケン。福島県出身だからというわけでもなく、ただただその演奏と指揮ぶりに拍手喝采、否やはり福島県人という意味からも拍手喝采、演奏の終盤は熱い想い指揮台からを福島に放っていたはずと勝手に解釈しながら、あらゆる所を熱くさせながら拍手喝采。


2011年8月12日金曜日

ルツェルン・フェスティバル・チャリティ公演ライブビューイング

 

ルツェルン・フェスティバル・チャリティ公演

国内ライブビューイング・イベント

ARK NOVA

-A Tribute to Higashi Nihonー

~東日本への贈りもの~

 

 

2011年8月9日(火)19:00

会場:東京国際フォーラム ホールA

同日 現地時間12:00

会場:KKL コンサート・ホール

(スイス・ルツェルン)

- Program -

■ARK NOVAについて

Michael Haeliger

(ルツェルン・フェスティバル芸術総監督)

梶本眞秀

(KAJIMOTO 代表取締役社長)

■スピーチ

近藤誠一

(日本・文化庁長官)

小松一郎

(在スイス日本国特命全権大使)

Urs W.Studer

(スイス・ルツェルン市長)

■ARK NOVA ホールについて

磯崎 新(建築家)

■クラウディオ・アバド指揮

ルツェルン祝祭管弦楽団の演奏 

マーラー「交響曲第10番」からアダージョ

ARK NOVA –A Tribute to Higashi Nihon-

~東日本への贈りもの~ プロジェクト・チーム

建築 磯崎 新
シェル・デザイン アニッシュ・カプーア
音響コンサルタント 豊田泰久(永田音響設計)
舞台コンサルタント デビッド・ステーブルズ
(シアター・プロジェクト)
監督 ルツェルン・フェスティバル
KAJIMOTO
磯崎 新アトリエ

クラウディオ・アバド指揮による、ルツェルン祝祭管弦楽団演奏のマーラーを聴くことが出来る魅力から、無料ライブビューイングに応募、運良く当選し、思いがけないスクリーンコンサートを鑑賞。

イベントの実際のところは、あくまでメインはARK NOVAプロジェクトの説明であり、アバドのマーラーはおまけ。音楽を一番に来ている自分にとっては、前置きのようになものが非常に長く感じられたものの、移動式テント(500~700席予定)のプレゼンテーションなどには大いに興味を持った。

アニッシュ・カプーアのデザイン、磯崎新の設計というそのコラボレーションは、非常に斬新で独創的なもの。そもそも、その奇抜なデザインや設計以前に、移動式テントでオーケストラが巡回するという構想自体が斬新なのもではあるのだが─。

ARK NOVA

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この中でオーケストラが鳴るとなると、巨大インスタレーションといった感。音楽のみならず、視覚から触覚までをも刺激する、大総合芸術となるはず。

演者などはまだ白紙の状態らしいが、ルツェルン、KAJIMOTOという名を見る限り、期待大。ただ音響が一番の懸念材料。素晴らしい演奏、素晴らしいデザインであっても、音響が悪ければすべてが素晴らしくないものになる。イベントの最後を飾った、マーラーを聴きながら、強くそう思った。

ライブビューイングというものは、やはり生の演奏とは比べものにならないほどに劣るというは言わずもがな。一流の演奏を目にし、聴きながら、そう感じてしまうのは贅沢極まりないことではあるが、スピーカーから聴こえてくる薄い音のために眠気との格闘の連続、メディアが発達した現代においては家で映像鑑賞していたほうがまだましかなとも思ってしまう。ルツェルンの音はルツェルンで聴けということか。

2012年春に始まる予定のARK NOVAでは、素晴らしい東日本の音を期待しよう。


2011年8月5日金曜日

QUATTRO渋谷のマーク・リーボウ

最高のライブを目撃した。

 

Tom's Cabin 新・聴かずに死ねるか!シリーズ
Marc Ribot Y Los Cubanos Postizos
<マーク・リーボウと偽キューバ人たち> /
GUEST: SAKEROCK

公演日 2011/08/04(木)
会場名 渋谷CLUB QUATTRO
開場 / 開演 19:00 / 20:00
前売り / 当日 ¥6,500 / ¥7,000
ドリンク D別

<来日メンバー>
Marc Ribot - guitar, vo
Anthony Coleman - keys
Brad Jones -bass
EJ Rodriguez - Percussion
Horacio "El Negro" Hernandez - drums

 

想像以上の観衆。立ち見も含めて、まさにぎゅうぎゅうと言うにふさわしいくらいの人。ドリンクを注文するのも嫌になるくらいの行列。あの状態で当日券を売ろうとしていたことすら信じられない。目の前の邪魔なデカイ柱と人が横で飲むビールを不快に見つめながら、サケロックとかいうバンドの演奏を聴く。

SAKEROCKという日本のバンドを初めて知った。トロンボーンをリードにしたカルテット的バンド。スカの香りもした。なかなか良い演奏だと思いつつも、初めて目にするバンドでありながら、目の前の柱のせいで、ベースとトロンボーンの姿しか目にすることができず、無念。

複雑な思いで聴き見していた前座は、時間的にも程よく終了。いよいよ偽キューバ人らの登場。

ベースのブラッド・ジョーンズは父親が危篤とかで来日せず、代わりのベースは・・・、長い名前で記憶することかなわず、とにかく、マーク・リボーが柱の陰に隠れず、まさに目の前、椅子に座りながらギターを弾きだしたことに胸をなでおろす。

出だしからマークのギターが凄まじい音を鳴らす。超テキトーに聴こえつつも、オルガンと見事にユニゾンするわ、決めの箇所では全員がビタっと揃うわで、マジックというのか、これぞ芸術的とでもいうのか、見事な演奏。マークの奏でるフレーズも、独創的で、それでいてものすごく聴き心地がよいために、自然と観衆がうねりだす。

間断なく続く物凄い演奏に、ぎゅうぎゅうでありながらもそこらで踊りだす輩も─、踊らずとも誰しもが皆、同じ気持ちだったことは間違いない。それほど彼らの演奏を会場中が堪能したはず。この演奏ならば、この会場の人の数も納得。それにしても、この演奏は想像以上だった。アルバムでは味わうことができない激しさと同時に、アルバムと同じ音源も披露するその技量の高さ、まさに究めたアーティストであった。

次も必ず行くべしと記録して、終。