2009年5月28日木曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009 公演番号269

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現代において我々が目にするチェロの姿というのは、18世紀末ごろに確立したものらしい。それまでは、様々な形態のものが存在したという。
J.S.バッハが活躍した18世紀初頭の文献などには、チェロを「バイオリンのように弾いていた」と記されているようだ。また、当時の絵画や彫刻などには、肩に掛けてチェロを弾いている様が見られるという。
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復元されたバロック時代に存在したという肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラでの無伴奏チェロ。演奏は寺神戸 亮、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラやバロック・バイオリンなどでの復元演奏に尽力している。

無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008
日常において、あまり積極的に聴かないマイナーメロディー。音の安定感に欠ける“肩掛けチェロ"の音色。音楽を鑑賞しているというよりも、音空間を体感しているという感覚。どんなメロディーが奏でられていたのか、全くといっていいほど記憶にない。

無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV1012
日常において、好んで聴く高音メジャー。“肩掛けチェロ”のような素朴な音色の楽器で、超絶テクニックを見せつけられると、思わず鳥肌が立ってしまう。耳慣れない音色・しかも不安定な音色で、耳慣れた音楽が耳慣れたとおりに奏でられる、当たり前のようでいて、普段決して経験することのない空間。これがバッハの時代の時空なのか─。

予定の演奏が終わると歓喜の喝采、そしてアンコール─
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 前奏曲
再び18世紀ヨーロッパの音空間。幻惑されて本日のバッハ、終了。

2009年5月15日金曜日

Man Of Aran / BRITISH SEA POWER

ドキュメンタリー映画の父、ロバート・フラハティの代表作「アラン」。制作された1934年当時、この映画はサイレントだった。現代において、DVDやウェブ上で「アラン」を見ると当然のように音が付随しているが、それら音楽や台詞はオリジナルではないわけだ。しかしながら、それら後付である装飾の効果は、思いのほか絶大であったりする。

じっと見ていると、どんどん引き込まれていく。ふと思うのは、その音楽によって引っ張り込まれているということ。確かに映像自体の迫力はある。しかしそれをいっそう高めているのが、誰が付けたか分からないが、付随されている音楽なのだろう。
さて、今ここで自分は巨匠の名画を記そうとしているのではなく、それに関連する気になる音楽を発見したために記録する。

Man Of Aran / BRITISH SEA POWER

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「ロバート・フラハティが1934年に制作した映画 “Man Of Aran”という映画のサウンド・トラック」という解説があり、反射的に反応してしまった次第。
ブリティッシュ・シー・パワーなるバンドは、初耳だが、どういった方々か─調べるに、英国方面のインディーズバンドで、ギター・ポップ、インディー・ロック、パンク等々のラベルが貼られている。
スタジオ録音アルバムとしては4枚目となる今回の作品は、今までとは異色であるようだ。しかしながら、ほかのアルバムの音色も何となく想像できる気が…聴かずして判断するのは危険だろう。とにかくも、この「アラン」のサントラをじっくり聴いてみたい。

彼らが所属するレーベル、Rough Trade Recordsがプロモート用だと思われる「アラン」+ブリティッシュ・シー・パワーの映像をYouTube上にアップロードしている。格好いい映像だと思うと同時に、格好いいと思ったのは音楽に対してなのだろうかとも思ってしまう。それにしても、この映像は再編集されているのだろうけれど─、さて、もとの映像はどうだったか…記憶がない。また改めてオリジナルの「アラン」を見なければなるまい。
オリジナルとこのサントラを比べるのもよいが、やはり、再構成されたブリティッシュ・シー・パワー版「アラン」をすべて見たいものだ。彼らはすでに映像とともにライブをしてしまっているということ。その映像もアップロードされていた。

2008年6月19日付である。どうやら今回のアルバムは、ライブで行っていたものの集大成のようだ。映像つきのライブをぜひ見たいと思ったのは淡い期待だった。もっとも、爆発的なセールスを記録すれば来日もあるかもしれないが、難しいだろう。

2009年5月12日火曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009 公演番号282

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相田みつを美術館での公演。数々の作品が展示されている、まさにそのど真ん中での演奏。環境は最高。ただ、狭いスペースのため、多少の圧迫感。オーケストラの演奏は無理だろう。
今回もソリストの演奏。グナール・レツボールなるミュージシャン。柔和なスティーブン・セガールといった印象。バロック風(?)の衣装をまとい登場。
手に持つ楽器はバロック・ヴァイオリン。見た目は現代のヴァイオリンと変わりない。音もそれほど変わらないが、倍音のような装飾音が多いような─ハルダンゲル・フィドルのように共鳴弦があるのかと思ったが、それは気のせいのようで、ガット弦を使用しているために倍音が鳴っているようだ。悪く表現すれば、その音は非常に不安定で、所々において演奏ミスをしているように思ってしまう。良くいえば、牧歌的で、時代を遡って、あたかもバロック時代の演奏会に身を置かれているような気分にさせられる─そんな印象のバロック・ヴァイオリン。
普段耳慣れない音、さらにヴェストホーフ、ヴィルスマイヤーという過去に聞いたこともない作曲家、そしてその音楽─個人的に、演奏されている音楽を捉えることが非常に困難だった。一度聴いただけでは決して記憶することはできない、今現在もどのような音楽であったか思い出すことができない。バッハに多大な影響を与えたであろう音楽だということだが、凡人たる自分には全く理解できなかった。
最後は、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを演奏。これはバッハの音楽なのかどうか分からないくらい困惑。バロック当時のバッハの音楽と、現代のバッハの音楽というのは、別物なのかもしれない。



2009年5月8日金曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009 公演番号215

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東京国際フォーラム内で最も大きなホールでの公演。ステージの両脇に大きなモニター、そこに演奏中の細かな表情などをしっかりとしたカメラワーク、スイッチングでライブ映写、その効果は極めて絶大。
��階40列目73番という座席。大ホールだけあって、やや遠く感じてしまうのは贅沢か…。演奏中は大画面モニターを眺めることが多かった。
ボリス・ベレゾフスキー、ブリジット・エンゲラーという有名ソリストの出演とあってか、大きな会場はほぼ満員。会場の熱気も高まっていて、予想外に騒々しい。もっとも、今年はチケット販売率が94%以上だったというから、どの公演も大盛況だったに違いない。
BWV1052、ブリジット・エンゲラーのピアノで始まる。非常に力強くて、それでいて流れるような演奏。素晴らしい。しかも、譜面めくり係を置かずに、どんなにハイスピードな演奏であっても、譜面台の譜面を自らものすごい速さでめくっていた。あまりの激しい動作に、これで本当にいいのかどうかという疑問さえも感じてしまった。
��WV1056、ボリス・ベレゾフスキーのピアノ。傍らには譜面をめくる人、─やっぱり必要ですよね─。体の大きさとは似つかない演奏、エンゲラーよりも力強さを感じない、しかしその繊細さは際立っていた。
同じ公演で2人のソリストによる似たような協奏曲を聴くと、素人感覚でもその演奏の違いが何となく分かるもので、演奏者によって曲の表情が変わるものだと実感できただけでも、この公演を聴いた甲斐があった。
��WV1060、エンゲラーとベレゾフスキーとの共演。2人の演奏の違いを何となく分かったつもりだったが、どちらがどの音を奏でているのか全く判別できず。しかも、演奏された2曲とも急─緩─急の3楽章構成で、さすがに最後は退屈に思ってしまった。しかしながら、2人の演奏、それにシンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏・ジャン=ジャック・カントロフ指揮、いずれも素晴らしいものであり、怠りなく最大限の賞賛を送った。

2009年5月6日水曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009 個人的記録

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開催期間、4月28日~5月5日(東京国際フォーラム:5月3日~5月5日)のうち、5月4日・5日の2日間、国際フォーラムを中心に鑑賞。
��日夕方に初めて訪れ、公式プログラムと公式CDを入手しようと各種ショップを歩き回るが、その時点ですでに公式CDは売り切れていた模様。1000円というお得な値段であるためであろう。モーツァルトの公式CD(ラ・フォル・ジュルネ金沢)、「民族のハーモニー」の公式CD(ラ・フォル・ジュルネ2007)は大量に陳列されている。J.S.バッハは想像以上に人気があるのか。去年のシューベルトのCDも売られていなかったので、すでに完売しているのだろう。去年は開催2日目に初訪問し、まだCDが大量に売られていたようだったが─。「民族のハーモニー」のCDが300円引きで販売されていて、まだ持っていなかったので即購入。それにしても、個人的には「民族のハーモニー」の企画が最も気に入っているのだが、そのCDだけが売れ残っているとは、何とも悲しいことである。
去年と比べて来場者が多い印象だったが、東京国際フォーラムの来場者は約40万人(去年・約64万人)だったという速報値が発表されている。開催日数3日間(去年・5日間)、もう少し長くてもいいように思う。
ラ・フォル・ジュルネ2010のテーマは「ショパン」だという。バッハもシューベルトも作曲数は1000曲前後、しかしショパンは300曲あるかどうか…これ以上日数を減らすのはやめてほしい。


鑑賞した有料プログラム─

公演番号:215
出演:ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ)、ブリジット・エンゲラー(ピアノ)、シンフォニア・ヴァルソヴィアジャン=ジャック・カントロフ(指揮)
演目:J.S.バッハ/チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番ニ短調BWV1052、J.S.バッハ/チェンバロ(ピアノ)協奏曲第5番ヘ短調BWV1056、J.S.バッハ/2台のピアノのための協奏曲第1番ハ短調BWV1060


公演番号:282
出演:グナール・レツボールバロック・ヴァイオリン
演目:ヴェストホーフ/無伴奏ヴァイオリン組曲第4番ハ長調、ヴィルスマイヤー/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番ハ短調、テレマン/無伴奏ヴァイオリンのための幻想曲第7番変ホ長調、J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005


公演番号:269
出演:寺神戸亮ヴィオロンチェロ・ダ・スッパラ
演目:J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008、無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調BWV1012


公演番号:341
出演:小曽根真(ピアノ)、中川英二郎(トロンボーン)、児玉麻里児玉桃(ピアノ)
演目:バッハの作品をもとに変奏・即興演奏


公演番号:332
出演:ドミトリ・マフチン(ヴァイオリン)、井上典子(ヴィオラ)、アンリ・ドマルケット(チェロ)
演目:J.S.バッハ|シトコヴェツキー/ゴルトベルク変奏曲ト長調BWV988(弦楽三重奏版)


公演番号:355
出演:ブリジット・エンゲラー(ピアノ)、アンリ・ドマルケット(チェロ)
演目:J.S.バッハ|ジロティ/「オルガンのためのトッカータ、アダージョとフーガ ハ長調BWV564」よりアダージョ、J.S.バッハ/「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番ハ短調BWV1017」よりシチリアーナ、カンタータ「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV61よりコラール、「ピアノ協奏曲第5番ヘ短調BWV1056」よりアリオーソ、J.S.バッハ|ブゾーニ/「無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007」より前奏曲、J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008、J.S.バッハ|ブゾーニ/半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903



今回の有料公演は、ほとんどが指定席。故に、場所取りなどする必要もなく、時間的な余裕も生まれ、あらゆる企画・展示・買い物・飲食をじっくり堪能することができた。

無料公演もいくつか鑑賞、いずれも予想以上の観客で演奏者の姿が全く見えないことも─。無料公演をしっかり見るためには1時間ほどの場所取りが必要な状況だった。