2006年11月9日木曜日

旅立ちの時

音楽を題材にした映像って楽しいですよね。

映画「旅立ちの時」をご存知ですか?リバー・フェニックス主演なので知っている方が多いと思います。知らない方のために簡単にストーリーを説明いたしましょう。

反戦運動でテロリストとしてFBIに指名手配された両親と共に、名を変え各地を転々と逃亡生活を送る少年ダニー(リバー・フェニックス)。ある高校で、音楽教師に音楽の才能を認められ、音楽の名門大学に進学するよう勧められる。そんな時、FBIの捜査がすぐ近くにまで迫ってきて、またも逃亡しなければならない事態に。ダニーが音大に進学するということ、それは両親と別れるということを意味していた。
ダニーの音楽の才能は母親から授かったもの。ダニーの母の父親は、実は進学しようとしている音大の学長だったのだ。ダニーの母は、将来音楽界で活躍を約束されていたのだ。それが1度の反戦テロ行為で犯罪者となってしまった。
家族全員、ダニーのチャンスをつぶしたくない、しかし家族がバラバラになるのも嫌…さあダニーと家族はどのような選択をするのだろうか。


監督はシドニー・ルメット。「十二人の怒れる男」「質屋」「狼たちの午後」「セルピコ」など素晴らしい社会派映画を撮っています。個人的にはアル・パチーノ主演の「セルピコ」が最高です。夢と希望に燃えて警察官になった主人公・セルピコが、決して警察内部の不正に屈しないという話で、アル・パチーノ演じる孤独のセルピコに涙しちゃいました。
シドニー・ルメットは映画の中の音楽に特別なこだわりを持っていなかったと思います。ちなみに「セルピコ」での音楽はというと、希望に燃えて成長していく過程を描いた冒頭部分だけに、イージーリスニング的なほのぼの音楽がバックに流れているのですが、警察の現実を知っていく過程では、ほとんど音楽は流れていません。音楽を効果的に使おうとしているとは思いますが、それは、例えばセルピコが念願の金バッジを手にした時初めて泣くシーンには一切の音を排除する、というような手法なのです。

さて「旅立ちの時」なんですが、音楽を題材にしているとはいえ、やはり映画中の音楽は必要最小限に抑えられていて、それゆえ、主人公・ダニーが奏でるピアノのメロディーが引き立てられています。そして、やはり音楽は希望のような存在として扱われています。逃亡生活から逃れる希望として、音楽が存在しているのです。
テロリストの子供は音楽の天才という、一見非現実的な物語のように思えてしまいますが、それをリアルに見せているのは、社会派シドニー・ルメットの手腕なのでしょう。

音楽を外側から見て、音楽って素晴らしいものなんだなぁって感じる映画、それが「旅立ちの時」なのです。

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