Physical Graffiti (1975)
LED ZEPPELIN
Disc 1
1.Custard Pie
2.The Rover
3.In My Time Of Dying
4.Houses Of The Holy
5.Trampled Under Foot
6.Kashmir
Disc 2
1.In The Light
2.Bron-Yr-Aur
3.Down By The Seaside
4.Ten Years Gone
5.Night Flight
6.The Wanton Song
7.Boogie With Stu
8.Black Country Woman
9.Sick Again
新たに「スワンソング・レコード」という独自のレーベルを立ち上げ、その弟1弾となったこのアルバムは、全てのアルバムの中で一番セールスと評価ともに大成功を収めた作品といえるだろう。セールスの面だけでいうと、発売前からゴールドディスクになり、発売されるとこのアルバムとともに過去に発売されたアルバム全てがチャートインするという現象まで起こった。2枚組であるにもかかわらず、これほどまでのセールスを記録すると、批判の声はが少なかったのは当然というべきなのだろう。
このアルバムははじめから2枚組になる予定ではなく、いざレコーディングを終了してみると予想以上に収録時間が長くなり1枚では収まりきらなかったことから、過去の未収録曲を含めて現在の形になった。なんともいいかげんというか、自由というか…1枚に収めるために曲を短くしたりしないところは、しっかりと評価してもよいのだろう。
ジャケットにも創造の芽が及んでいる。写真はニューヨークのマンハッタン、セントマークスという所にあるアパートで、当時発売されたLPでは窓がくり抜かれていて内側が見えるように施されていて、メンバーのプライベート写真などを見ることができたという。また、内包の入れ方に寄って見える絵柄も変わったというから、常に新鮮なジャケットを目にすることができたのではないだろうか。
このアルバムを収録する前、ジョン・ポール・ジョーンズ脱退騒動があったという。ツアーに嫌気が差したジョーンズはウィンチェスター大聖堂の聖歌隊指揮者になるべく脱退を考えたらしいが、忠告や説得があったのだろうか、脱退を思い直しレコーディングに参加したという。そのエピソードを念頭にアルバムを聴くと、ジョーンズが辞めないでよかったと実感すると思うのだが…
Dcsc 1
1 カスタード・パイ(Page & Plant)
フレッド・マクダウェルの♪Drop Down Mama、ブッカ・ホワイトの♪Shake 'Em On Down、ブラインド・ボーイ・フラーの♪I Want Some Of Your Pie、ブラウニー・マギーの♪Custard Pie Bluesなどがこの曲の元ネタ。
歌詞は非常に理解しがたいものだが、カスタード・パイとは女性の性器を差しているようで、オーラル・セックスの推奨を歌っているようだ。
ジミー・ペイジのワウワウ・ギターとジョン・ポール・ジョーンズのクラビネットが中心に曲が展開している。
2 流浪の民(Page & Plant)
この曲は1970年、「III」が制作された時期にブロン・イ・アーにてアコースティックな曲として書かれたという。「聖なる館」作成時に録音されるたが、収録されずに、ようやくこのアルバムに収められた。
ジミー・ペイジのスタジオワークにより、よりヘビーな曲に仕上げられた。ここでのペイジはファズを使用している。
イントロ部分は、キンクスの♪Wicked Annabella(1968)に非常によく似ている。
“Rover”とはイギリスのスラングで放浪するという意味。
ライブでは決して演奏されることはなかったという。
3 死にかけて(Bohnam, Jones, Page & Plant)
ブラインド・ウイリー・ジョンソンがレコーディングした♪Jesus Make Up My Dying Bedというトラディショナル・フォーク/ブルース(ボブ・ディランやジョッシュ・ホワイトなどがカバーしている)を基にしている。
ジミー・ペイジがオープンAコードで演奏するこの曲は、即興的要素を大いに含んでいて、終わりが決められていないため、スタジオ収録でも11分を超え、アルバムの中で一番長い曲となった。ライブで演奏されるときも、終わり方がバラバラだったという。
ここでの終了の仕方は、ロバート・プラントのささやくようなボーカルで演奏終了となっているのだが、実は終了間際プラントが歌っているときに誰かがせきこむ音が収録されている。どうやらジョン・ボーナムらしいのだが、偶然であれ意図的であれ、それがこの場合での終了の演出となっているようだ。
4 聖なる館(Page & Plant)
ペイジのデジタル・ディレイのギターリフから曲は始まる。ここでも、ボーナムのバスドラをたたくペダルのきしみが聞こえる。
前作のアルバム「聖なる館」に収録されるために録音されたが、そのときは見送られ、今回収録されるに至った。
“聖なる館”とはライブでのアリーナなどを表現したもの。しかし、ライブでは決して演奏されることがなかったという。
5 トランプルド・アンダー・フット(Jones, Page & Plant)
ロバート・ジョンソンの♪Terraplane Bluesを基にしている。テラプレーン(Terraplane)とは過去に存在した車メーカー。
ジャムセッションから発展し、ライブでよく演奏されて、ペイジのソロやジョン・ポール・ジョーンズのソロなどを加えて長い演奏になったという。ジョーンズのクラビネットから始まるこの曲は♪ノー・クォーター同様、ジョーンズのソロ演奏を披露する場でもあったようだ。
クラビネットを使用していることから、1972年にリリースされたスティービー・ワンダーの♪Superstition(迷信)にいていると言われている。またボーカルのメロディーはドゥービー・ブラザーズの♪Long Train Runnin'(1973)に非常によく似ている。
逆に1979年のスティックスの♪Renegadeでは、この曲が参考にされている。
6 カシミール( Bonham, Page & Plant)
メンバー全員がこの曲は最も成功した曲だと認めている。
歌詞はプラントがモロッコのサハラ砂漠へ行ったときに書いたもので、インドとパキスタンの間に位置しているカシミールのことを具体的に述べているわけではない。
ペイジのギターはモーダルDまたはDADGADという変則的なもの。
ボーナムは最初4/4のリズムで演奏、途中で3/4のリズムに代わる。淡々とドラミングしているが、実はこの曲のキーポイントであると言っていいだろう。
メロディーはモロッコや中東の音楽の要素を取り入れてる。
コントラバス、チェロ、バイオリン、およびホルンといったオーケストレーションに加え、メロトロンが曲を壮大なものにしている。それぞれの楽器にはそれぞれ独自のメロディーが与えられているようで、そうれが相対的になることにより、音の厚みを増しているようだ。ジョーンズはそれがこの曲が成功した大きな要因だと語っている。
♪天国への階段と同様に、長尺にもかかわらずラジオでよく演奏された曲。
Disc 2
1 イン・ザ・ライト(Jones, Page & Plant)
ほとんどジョーンズが作曲したこの曲は、バンド発足初期の作品♪In The Morning (別名 Take Me Home)という曲がベースとなっている。
シンセサイザーの生での再現ができなかったため、ライブでは演奏されなかったという。
イントロ部分ではペイジがバイオリンの弓を使ってギターを弾いて、ユニークな音を作り上げている。
2 ブロン・イ・アー(Jimmy Page)
1970年のサードアルバムの際に録音された、アコースティック・ギターのインストゥルメンタル。曲の名前は、ウェールズのスノウドニアにあるコテージの名前を取ったもの。
ギターはマーチンD-28を使用していて、チューニングはオープンC6(C-A-C-G-C-E)。開放弦が反響したり、ミスタッチのように聞こえるのはペイジの演出だという。
3 ダウン・バイ・ザ・シーサイド(Page & Plant)
1970年にブロン・イ・アーでアコースティック音楽として作られ、1971年にエレクトリック・アレンジメントされてフォースアルバムに収録される予定だったのが見送られ、結果このアルバムに収められている。
ゆっくりしたテンポと速いテンポ、2つのパートがある。スローテンポ部分では、ギターのアンプにロータリースピーカーを使用していて、コーラス効果を出している。ジョーンズは電子ピアノを弾いている。ライブでは演奏されなかった曲。
この曲は、ニール・ヤングの♪Down by the Riverからの影響を強く受けているという。プラントはヤングとスティルのボーカルを感心していたようで、彼自身、好んでバッファロー・スプリングフィールドやCSN&Yの曲を歌ったという。
4 テン・イヤーズ・ゴーン(Page & Plant)
最初はインストゥルメンタルとして作曲され、ペイジが14トラックのギターを弾いてオーバーダビングされている。後のプラントがそれに歌詞を付けて、現在の形で完成した。
歌詞の内容は、プラントの10年前の恋人のことを歌ったものだという。
1977年のアメリカ・ツアーでこの曲を演奏する際、ジョーンズが特注のトリプル・ネック・ギター(6弦ギター、12弦ギター、マンドリン、ベースペダル)を使用した。
5 夜間飛行(Jones, Page & Plant)
フォースアルバムに収録しようとしたのが外されて、このアルバムに収められた。
曲のほとんどをジョーンズが作ったようだが、歌詞をプラントが修正し、徴兵を回避しようと努力する若者の物語になった。
6 ワントン・ソング(Page & Plant)
ジャム・セッションから生まれた曲で、ペイジのアグレッシブなリフが特徴的だ。
歌詞の内容は、悪意を持った女性とのセックスを描いたものだという。
ペイジはソロでリバーブとロータリースピーカーを併用しているために、ハモンド・オルガンとうまく絡み合い、深淵に入り込んでいくような効果を 作り出している。この手法は、ペイジがヤードバーズ時代からよく用いていたものだが、レッド・ツェッペリン発足当初は、レコーディング・エンジニアから強い拒否反応を示されたという。
7 ブギー・ウィズ・ステュー(Bonham, Jones, Page, Plant, Ian Stewart & Mrs.Valens)
フォース・アルバムを収録中に出来上がった曲。ローリング・ストーンズの車載スタジオを利用しているのと同時に、ストーンズのロード・マネジャーであるイアン・スチュワートがピアノで参加している。
リッチー・バレンズの♪Ooh, My Headと登用だとして訴えられて、結局契約料を支払うことになった。クレジットに“Mrs.Valens”と記されているのは、「何も報われていないリッチーの母親のため」だとペイジが言ったとか─。
8 黒い田舎の女(Page & Plant)
このアコースティック音楽は、1972年、ミック・ジャガーの家の裏庭で収録された。
冒頭での声は、レコーディング・エンジニアが「飛行機の音が入ってしまった」と言ったのに対してプラントが「ほっとけ」と言っているもの。
Black Coutryとはプラントが生まれ育ったバーミンガム周辺のこと。原題を直訳すると“ど田舎の女”とするのが正しいらしい。
9 シック・アゲイン(Page & Plant)
グラム・ロックのようなこの曲は、ホテルの部屋まで押しかけてくる熱狂的なファンのことを“LA Queen”と呼んで、歌われているもの。ボーナムのバスドラが常に強く響いていて、やかましさをよく表現しいる。
ライブではよく演奏されたようだ。
このアルバムも大好きです!
返信削除流浪の民はライブではやらなかったんですか?
結構好きなんですけどね。
そういえばドリーム・シアターがライブでカヴァーしてましたね。
ドリーム・シアターの演奏はメチャクチャ上手いんですけど、やっぱり上手すぎるとあのノリがでないんでしょうかね?(笑)
なんだかかっちりって感じでしたね。
あとワントン・ソングも好きです。
このノリは他のバンドがカヴァーしてもだせないんでしょうね。
ボンゾのドラムだけでもすごいグルーヴ感です。
僕もこのアルバムが一番好きです。
返信削除流浪の民は1曲としては演奏されなかったみたいで、イントロ部分はほかの曲とくっつけて演奏したみたいです。
いくら技術を習得しても、魂を真似ることはできないということではないでしょうか。
僕は♪イン・ザ・ライトが好きですね。この曲がファーストの♪Your time is gonna comeと合体するといいのになぁと勝手に思っているのですが…
このアルバムが一番ボンゾのバスドラがやかましいように聴こえると思うのは僕だけ?
これは、バラエティに富んだ音作りですよね。
返信削除昔聴いた時はインパクト弱かったけど、今聴いてみると、お得感あるし(?)。
私は「Down by the Seaside」が好きだな。
こういうまったりした曲がいいのは、年のせい^^;
「死にかけて」はディランの方が好き。
アルバムジャケットは、CD版も同じように窓がくり抜かれて楽しいジャケットですね。
DISC2の前半のまったり系が、僕も、とても気に入っています。
返信削除��D版のくりぬきは紙ジャケの再発されたものですね。紙ジャケが出たときは全てに惹かれましたが、お金かかるし結局小さいからいいや、と自分に言い聞かせてガンマンしました。
♪死にかけて はディランもいいと思うんですけど、今回原曲の♪Jesus Make Up My Dying Bedを初めて聴いたら、ものすごく良かったです。
いままでのアルバムは「厳選素材」をそのまま出してたような曲もあったのですが、このアルバムではそれを調理してくれてる感じがします。消化できそうな・・。年ですかね(笑)。
返信削除いままでは一本気のペイジ親父の男の料理だったのが、ここで初めてペイジシェフを中心としそれぞれが自分の仕事をしてそれを合理的につなぎ合わせた、完璧なフランス料理が完成した、という感じでしょうか。ちょっと違ったかな…(笑)
返信削除アナログでもってます。長いですね(>_<)お気に入りの曲は「カシミール」をはじめ「Trampled UnderFoot」など多数。シンセが たくさん使われていて げんそう的。
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