LED ZEPPELIN IV (1971)
LED ZEPPELIN
1. Black dog
2. Rock 'n' roll
3. Battle of Evermore
4. Stairway to Heaven
5. Misty mountain hop
6. Four sticks
7. Going to California
8. When the levee breaks
このアルバムのタイトルはよく「Led Zeppelin IV」と表記されるが、実際にはこのアルバムのタイトル名はない。
このメンバーを表しているというシンボルマーク(左から順にペイジ、ジョーンズ、ボーナム、プラント)がアルバムタイトルであり、これ以外のレッド・ツェッペリン側からのアルバムタイトルに関する呼称が発表されていないために、世の中で表記されているこのアルバムの文字タイトルは、すべて仮称なのである。
当初、このマークはそれぞれのメンバーが独自にデザインしたものであるとのリリースだったが、後にペイジのマークは、ジェロラモ・カルダーノが1557年に著した「Ars Magica Arteficii (人為的魔術奥義)」からの引用であるということが分かった。※詳しくはこちら
ジャケットに写っている絵は、プラントがレコーディング・スタジオ近くの雑貨店で買ったもので、壁紙がはがれ落ち崩れかけている壁に掛けられている。
レコードで発売された当時、ジャケットの表と裏のどこにも文字が一切なかったという。レコード会社からはジャケットの変更を求められたらしいが、デザイン権はツェッペリン側が保有していたので、異例のデザインでアルバムがリリースされたのだ。この徹底したコンセプトが功を奏したのか、フォース・アルバムは彼らがリリースしたアルバムの中で最も売れている。
「I」「II」のハードな面と「III」のアコースティックな面の融合、それがこのフォース・アルバムの音楽的なコンセプトであるだろう。
あの有名なマエストロ、カラヤンが賞賛した♪Stairway to Heaven の静と動がまさしくこのアルバムを物語っている。8分を超えるこの曲は、ラジオなどで盛んに流されてシングルカットを望む声も多かったらしいが、決してシングルカットされることはなかった。シングルにするということは8分の曲を短くカットしなければならなく、商業目的のためだけに作品を作り変えることを嫌った彼らは、文字なしジャケットというコンセプトも手伝って、人々には非常に芸術性を持っているように写ったのではないだろうか。さてその芸術とは…
1 ブラック・ドッグ(Jones, Page & Plant)
ギターとベースのユニゾン・ウォーミングアップから始まるこの曲のリフは、ベースを弾いているジョン・ポール・ジョーンズがマディー・ウオータースのアルバム「Electric Mud」からヒントを得たようだ。ジョーンズはベースのパートも一緒に展開するエレクトリック・ブルースなるものを求め、ギターとベースがユニゾンで展開するリフが生まれた。アカペラ部分の歌詞はフリートウッド・マックの♪Oh Well (1969) から思いついたものだという。
ドラム・パターンはシンプルではあるが、リズムやテンポが複雑だ。
この曲でペイジは、ユニバーサル・オーディオの1176リミッティングアンプやマーシャルアンプなどを使用して録音しているのだが、マテリアルに関しても数多くのギタリストに影響を与えている。
2 ロックン・ロール(Bonham, Jones, Page & Plant)
ジャムセッションから生まれた曲。
最初のボーナムのドラムはリトル・リチャードの♪You Keep A-Knocking (But You Can't Come In)を参考にしたもの。その曲にはジョーンズがベースで、ペイジがギターで参加していたという。また、ドラムラインはエディー・コクランの♪Something Else と全く同じであるという指摘もある。
曲の後半では、当時ローリング・ストーンズのロード・マネジャーだったイアン・スチュワートがピアノで参加している。
3 限りなき戦い(Page & Plant)
ギターとマンドリンで演奏されるこの曲は、暖炉の前でペイジがマンドリン軽く弾いていたときに生まれたという。
ボーカルはプラントのほかに、イギリスの女性フォークシンガー、サンディー・デニーが参加している。プラント以外のボーカルを聴くことができるのは、この曲だけである。ライブでは、デニーのボーカル部分をジョーンズが歌い、ジョーンズは、また、マンドリンを弾いているペイジに代わってギターを弾いた。
ここでの歌詞はトールキンの「指輪物語」の場面を歌ったものだという説が有力だ。プラントは、「指輪物語」から影響を受けた歌詞をしばしば書いている。
4 天国への階段(Page & Plant)
12弦アコースティック・ギターとリコーダーの演奏から静かに始まり、単一のメロディーが繰り返しながら徐々に盛り上がっていく構成になっている。
曲は大きく3部に分けられる。
��部(-2:12):ギターのアルペジオとリコーダーだけのアンプラグド
��部(2:13-5:33):エレクトリック・ギター、エレクトリック・ピアノが入ってきて、新たなメロディーパートが加わる
��部(5:55-):テンポが速くなり、曲調とメロディーががらりと変わるが、1部で提示したコード進行を踏襲しているために統一性を保っている
今までのツェッペリンにはないくらいに、すべて考えに考えられて、意図的に配置され、アドリブ的部分は全くないといっていい。今まで彼らをやかましがった評論家は閉口したという。ジョーンズは「この曲でブラック・サバスと比べられるようなことはなくなった」と皮肉をこめて述べたという。
同時に、この曲があまりに評価されすぎて限定的なイメージを持たれることを嫌ったプラントは、「たまたま生まれた曲」などと述べたともいう。
ジャンルが全く違う世界のカラヤンが「オーケストラでこの曲を演奏したとしても、全く同じアレンジにしただろう」というほどに、この曲は素晴らしく、この曲をシングルカットしなかったためにアルバム自体のセールスが伸びたとも言われている。
5 ミスティ・マウンテン・ホップ(Jones, Page & Plant)
ジョン・ポール・ジョーンズのポップなエレクトリック・ピアノから始まるこの曲の歌詞は、「指輪物語」の霧ふり山脈(Misty Mountains)を引用したもの。
ギターとピアノがユニゾンするリフが非常に特徴的で、そのリフを中心に曲が展開していき、途中ボーカルもそれにシンクロする。しかし、ちょうど2分11秒付近でそのシンクロがばらばらになる個所がある。単にそれは個々が演奏を間違ったものらしいが、それも曲の個性と捉えてそのまま間違ったテイクをアルバムに収録したという。
6 フォア・スティックス(Page & Plant)
曲の由来は、ボーナムが両手に2ずつのスティック・計4本のスティックを使用したからだという。4本のスティックを持ったボーナムは微妙な音の表現ができなくていらいらし、結局できる限り強くたたき続けたという。
この曲を収録中にミステイクをしたペイジが、たまったフラストレーションを開放するためにふざけてでたらめなリフを弾いて、それに呼応するようにボーナムがリトル・リチャードの曲をたたいた─、その結果生まれた曲が♪ロックン・ロールだといわれている。
7 カリフォルニア(Page & Plant)
ペイジのアコースティックにジョーンズのマンドリンをバックに静かにプラントが歌うこの曲は、ペイジ、プラントが夢中になったジョニ・ミッチェルのことを歌った曲だという。
8 レヴィー・ブレイク(Bonham, Jones, Page, Plant & Memphis Minnie)
1927年のミシシッピ大洪水の悲劇を歌ったこの曲を、カンザス・ジョー・マッコイ/メンフィス・ミニー夫妻が1929年に最初に録音した。ツェッペリンはそれを編曲している。
ドラムの音は天井が高いホールで収録しているため、非常に大きい反響効果を生み出している。それに合わせてハーモニカにもリバーブをかけていて、統一された世界観を作り出している。このドラムの音は究極のドラム・サウンドといわれていて、現在、サンプル素材としてよく使用されている。
おおっ!もうIVまで行ってしまったんですね。
返信削除このレコードは某地方FM局の番組で何かに当選してもらったんですね。
当選なんて初めての経験で嬉しかったですよ。
でも、収録されている曲は半分くらいしか覚えていません。
ジミィが黒魔術にはまっていた、という噂?は、このマークがもとになったんでしょうかねぇ・・・
友だちとたまに話題になるんですが、ジミィは東洋の血が入ってるんじゃないのかな?
アングロサクソンの顔とはちょっと違いますよね。
連続企画お疲れ様です!
返信削除もうすぐ折り返しですね、がんばってください。
このアルバムはブラック・ドッグ、ロックン・ロール、天国への階段以外の曲は割りと好きです・・、ってかなり偏屈でしょうか?(笑)
天国への階段はプラントが、「こんなに評価される(名曲として)曲とは思わなかった。」とコメントしているようですが、のちにペイジが「そんなはずはない。(プラントも)名曲となる手ごたえを感じていただろう。」的なコメントをしていましたね。
実際「たまたま生まれた曲」な発言は半分は本音だったんじゃないかと推測しますが・・、まあ本人じゃないとわかりませんね。
でもカラヤンが認めるほどの名曲とは・・、知りませんでした。
私の耳は節穴だったんでしょうかね?
フランク・ザッパのカヴァーはちょっと面白かったですが・・。
すごい内容ですね!Ⅲ以外は、愛聴盤です。ケルト文化など 取り入れてるところが 好きなんです。しかし ツェッペリンを70年代ロックの number1にしないのは やはり納得できないです(^_^;)まぁ 「勝手にしやがれ」ですけどね。
返信削除今、天国への階段を聴きましたがとても短く感じられました。初めてです。これもシュリンパーさんの詳しい解説のおかげですね。
返信削除この作品は一番ツェッペリンの型枠みたいなものを感じられるかな~。とてもまとまってる気がします。結果論かな?(笑)。
みずねこさん
返信削除このアルバムの内ジャケの絵などから、ジミは黒いかもというふうな噂があったらしいですが、はっきりとした実証がないみたいで、ジミも健康そうなので、多感な少年がUFOやお化けに興味を持つようなレベルかと思います。あくまで、音楽のネタですな。これが逆転するとホントやばいと思いますよ。そうであったならば、恐らく今ごろボンゾと仲良く演奏していることだったでしょう。
けんさん
返信削除ペイジは♪天国~へ誇りを持っていたらしいですよ。そりゃあそうでしょうねぇ。プラントにはそんな思い入れなんてないかもしれませんね。ザッパがこれをカバーしているんですか。初耳です。
僕はレヴィー・ブレイクが一番好きですね。やっぱりやっぱ昔からある曲は強いし。ツェッペリンを調べれば調べるほどパクリの連続ですが、すべて原曲の上をいっちゃってて、パクられた方はたまらんでしょうなぁ。
ブラック・ドッグも好きです。聴けば聴くほどおかしくなってくるんですよ、この曲。中間部分の4人の演奏がユニゾンしているリフが最高に笑えます。
久々、たまに…それが一番いいのかもしれませんね、このアルバムは─。
まりさん
返信削除多分、ツェッペリンを嫌いな人は大嫌いんだと思うんですよ。ナンバー1を取るには、やっぱり広く浅く的な要素がなければ駄目かもしれませんよ。結構入り込んでいかないと、彼らのアクの強さを堪能できないと思うんです。そして、それを知ったとき、あんたらには分からないだろう的な快感を感じてしまうのです。
しょうもないかな、ツェッペリン党…
やかやかさん
返信削除僕はここでぶっちゃけますと、なんで♪天国への階段が名曲と呼ばれるのか分からんのですよ。最初聴いた時は、全然よくないと感じて、「雑誌には最高の音楽と書いているし、僕の感覚が駄目なのかな…」なんて思い、必死に繰り返し聴いて、少しずつ分かりかけてきたとはいえ、それほどいいとは思えない現状…解説を書きながら、「なるほど、すごいんだ」とやっと納得できたような今日この頃─。
♪ホテル・カルフォルニアとか名曲と言われるものを聴くと、ほら、明確な分かりやすさがあるじゃないですか。♪天国~にはそんなもの全く感じないんです。
でも、大変よくできている優等生のような曲です。そんなのツェッペリンじゃないゾ、と思ってしまうのです。