聖なる館
Houses of the Holy (1973)
LED ZEPPELIN
1. Song Remains the Same
2. Rain Song
3. Over the Hills and Far Away
4. Crunge
5. Dancing Days
6. D'Yer Mak'er
7. No Quarter
8. Ocean
前作はロングセラーとなり彼らのアルバムで最も売れたアルバムとなったのだが、アメリカのチャートでは1位になることはなかった。そこでこのアルバムは、アメリカ市場にいかに対応するかということをコンセプトに制作が進められたようだ。
その甲斐あって、アルバムは全米ナンバー1を獲得し目標は実現された形にはなったが、評論家の評価はひどいものであったらしい。
レゲエ、ファンク、ロカビリーといったさまざまな要素を内包しているこのアルバムに対して、レッド・ツェッペリンは軟弱になったという意見が多かったようである。しかし、それは彼らをハードロック・バンドとしてしか捉えていない見方であり、そのような偏った見方を捨てて彼らを捉えたならば、その幅広い音楽性とその実力をもっと評価し、むしろこのアルバムに対し驚きを示すべきなのかもしれない。
中身がいろいろ華々しく飾られたこのアルバムは、ジャケット作成にも非常に力が入っている。裸の子供が光に向かって石段を登っているこの写真は、アイランドの世界遺産、ジャイアント・コーズウェイで撮影されたもの。撮影期間、非常に天気が悪くて光が弱く、満足のいく写真を得ることができなかったらしいが、それがかえってデザインに力を入れることにつながり、不思議な世界観をつくりだすことができたという逸話がある。
上に表示されている発売当初のアルバムジャケットは、あらゆる地域で発売禁止となっている。児童ポルノの観点から、好ましくないとされたからだ。そういった地域では、ジャケットの中央部にバンド名とアルバム名が入った白い矩形が配置され、子供の下半身を隠したバージョンで発売された。
バンド史上初めてしっかりとしたタイトルがつけられたこのアルバム、バラエティー豊かだというがさてどんなものか…
1 永遠の詩(Page & Plant)
当初、この曲は序曲としてインストゥルメンタルで作られようとしていた。それにプラントが歌詞を付けることを提案して、今のような形になった。
プラントの音声部は収録時にテープスピードを少し上げているらしく、ピッチが少し上がっているのだという。
オリジナルタイトルの「音楽は変わることなく永らえる」というフレーズは、その後の彼らのテーマとなり、ライブでのオープニングで常に演奏された。
同名(The Song Remains the Same)のセミドキュメンタリー映画が1976年に制作されていて、日本では「レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ」という邦題で公開されている。
2 レイン・ソング(Page & Plant)
ジョン・ポール・ジョーンズがメロトロンを使用して、オーケストラ効果を出している。
ライブでは♪永遠の歌~♪レイン・ソングがセットで演奏されたらしく、ペイジはギブソンのダブル・ネック・ギターを使用、上の12弦部分のチューニングはEAGDBEという一般的なもので♪永遠の歌を演奏、下の6弦部分のチューニングはDGCGCDという変則的なもので♪レイン・ソングを演奏した。(ライブではアルバムのバージョンよりもひとつ高いキーで演奏された)
3 丘のむこうに(Page & Plant)
この曲はペイジがヤードバーズにいたころの♪White Summerへの追憶的作品。
��2弦ギターのフィンガリングプレイで始まり、エレクトリック・ギターがベースとドラムともに曲を勢いづけて、ラストはリバーブを効かせたスローなギターアルペジオで終わる。
4 クランジ(Bonham, Jones, Page & Plant)
ファンクのようなこの曲は、ジェームス・ブラウンの曲を参考に作られたといわれている。評論家などからは9/8拍子の踊れないファンクと言われたらしい。
シンセサイザーが効果的に使用されている。
5 ダンシング・デイズ(Page & Plant)
レコーディングに入って最初に完成した曲。レコーディング・エンジニアのエディー・クレーマーは、完成したこの曲を聴きながらメンバーがスタジオにある芝生で踊っている、と述べたというくらい、満足している作品のようだ。
オープニングのギターリフはアメリカのテレビのオープニングなどに使われたくらい、非常にインパクトがあるものだ。
6 デジャ・メイク・ハー(Bonham, Jones, Page & Plant)
ジョン・ボーナムがスタジオ・リハーサルでドゥーワップのリズムを刻んでいて、それに変化を加えているとレゲエのようなリズムが生まれ、その独特のリズムがこの曲に生かされた。
メロディーでは1960年代のアメリカのミュージカル・グループ、Rosie and the Originalsの♪Angel Babyからの影響・引用がみられる。
曲名と歌詞はイギリスの古いジョークからきている。「D'yer mak'er=Did you make her?(お前がそうさせたのか?)」がレゲエ発祥の地「ジャマイカ」と聞こえることから、次のようなジョークがあるようだ。
��ウィキペディア参照)
A:「妻と喧嘩してね。あいつジャマイカに行っちまったんだよ」
B:「ジャマイカ!?」
A:「(D'yer mak'erと言われたと思って)いや、あいつが自分で出て行ったのさ」
このジョークがこの曲の全てを作り上げている。
ジョン・ポール・ジョーンズはこの曲を嫌っているようだ。
7 ノー・クォーター(Jones, Page & Plant)
ジョン・ポール・ジョーンズが弾くシンセサイザーが印象的なこの曲は、ライブなどでは神秘的な光の演出とともに、ジョーンズがソロを披露する場にもなっていた。間奏部分ではクラシック・ピアノを演奏し、ピアノ・コンチェルトのような演出となり、もとは7分の曲が20分、30分になったという。
8 オーシャン(Bonham, Jones, Page & Plant)
この曲は、ステージの上から見たファンの“海”を歌ったもので、そのファンへ捧げられている。
15/16のビートで始まり、途中で4/4へと変化する。
バックコーラスはジョーンズとボーナムが担当している。
曲の1分37秒~38秒と1分42秒付近の2個所で電話が鳴る音が聞こえる。これは意図的という意見もあれば、レコーディングミスという意見もある。この曲のリマスターバージョンでは、電話の音が抑えられているようだ。
この曲でもボーナムがバスドラをたたくときのペダルのきしみが聴こえる。
このアルバムもタイトルだけみてると、覚えがあるんですが・・・曲は覚えてないッス。
返信削除ジャケットは、元は写真だったのですか?
イラストだと思っていました。
ジャケットの子どもたちも生身の人間ではなく、妖精のようだし・・・
日本はオトナのハダカには目を光らせ子どものハダカには寛容でしたが、異国は逆でしたね。
最近、シュリンパーさんの記事に触発されて、唯一もってるCD「フィジカルグラフィティ」を聴いてます。
次はコレですね。
タイトルの曲は「フィジカル・グラフィティー」に入っているから見覚えがあるのではないでしょうか。このアルバムにいれるつもりが、やめて、やめたのにタイトルだけはこのアルバムに使用したという、奇妙なことをしたので、最初、僕も結構混乱したものです。
返信削除僕が一番聴いているアルバムは「フィジカル・グラフィティー」なので、次はいままで以上に楽しいかも…しかし、曲数ちょっと多いかな…
聖なる館、大好きですね。
返信削除全曲大好きな曲でどれも思い出深いですね。
このアルバムはたしかローリー寺西も大好きなアルバムで、すかんちでクランジをモロにパクった曲もありましたね。
あれはツェッペリンファンなら笑えるほど(怒れない)いいパクリでした。
けんさん
返信削除ロックはもはや以前のブルースのような存在になってしまったのです。ブルースをパクリまくったツェッペリンは、こんどはパクられる番なんです。
僕もこのアルバムと次のアルバを一番聴いているんです。この2つはなんかつながっているように感じて、セットで覚えているような感じなんです。だからいつも、アルバムと曲のリンクを正確に捉えることができないんです。
いつもながらかゆいところに手が届く解説・・お見事です。
返信削除クランジなどは今聴いてもカッコイイですね。プラントが生き生きしてるかな?
もうREDゾーン振り切りみたいなことは無くなってはいますが、回転数押さえ気味でいい汗かいてる感覚が心地いいです。
こんばんは。いつもコメントありがとうございます。あんまりコメントを残さない横着者なもので申し訳ないです。
返信削除リンク貼らせて頂きました。今後ともよろしくお願いします。^^♪
今日から三連休なので 朝から『聖なる館』聴いてます。『狂熱のライブ』はDVDで持ってます。「The Rain Song」は 最初は ぴんとこなかったけど名曲ですね。「Dancing Days」はカシミールに通じる中東っぽさが魅力「デジャーメーカー」と撥音してました。レゲェを採り入れてますがプラントのボーカルが素敵!まだまだ私もツェッペリン知らないことが多いので感謝m(__)m
返信削除やかやかさん
返信削除解説というか自分自身がへー、へーと思いながら書いているような状態です。曲の背景を知れば知るほど、曲への愛着が生まれてくるんですよ。クランジはもともと好きだったんですけど、以前よりも何倍も好きになりました。
axis_009さん
ようこそ!そしてリンクありがとうございます。コメント残さなくてもいいので時々除いてみてくださいな。僕はそちらにリンクさせてもらえただけでも光栄ですから。
よろしくお願いします。
まりさん
いや~僕はツェッペリンのことは全く知らなかったのだと思い知らされています。まぁそのぶん、新鮮な彼らに出会うことができてかなり面白いです。でも、ちょっぴり大変です,,,