In Through the Out Door (1979)
LED ZEPPELIN
1. In the evening
2. South bound saurez
3. Fool in the rain
4. Hot dog
5. Carouselambra
6. All my love
7. I'm gonna crawl
1977年のアメリカツアー終盤、ロバート・プラントにまたしても悲劇が襲う。プラントの愛息が急逝したのだ。すぐにツアーはキャンセルされ、しばらくの間、プラントは公の場から姿を消した。
翌年に傷心をかろうじて癒やしたプラントが、ほかのメンバーとともにリハーサルを行い、次のアルバムの準備に入った。
数カ月後、スウェーデン・ストックホルムでレコーディングに入ることになるのだが、休止期間中にジョン・ポール・ジョーンズが黙々と作曲活動をしていたため、今回のセッションではジョーンズが主導で進行することになった。その結果、前作とは全く異り、キーボードが主体となったアルバムが完成することになる。
この収録中、ジミー・ペイジとジョン・ボーナムはしばしば遅れてスタジオ入りしたり、全く来ない日もあったという。そのため、作詞・作曲のクレジットにボーナムの名前が全く載らず、ペイジの名前さえ載らない曲もあった。また、前作に生じたペイジとジョーンズの亀裂がここでさらに広がってしまったといわれている。ペイジは1998年の雑誌のインタビューで─、アルバムは少しソフトになり過ぎだと感じていた。♪All My Loveなどは全く激しさなんてない。曲のコーラスにも不安があった。人々が波打つ姿なんて全く想像することができなかった。あんなの自分たちの音楽なんかじゃない。あんな方向性を続けていくつもりはなかった─と語っている。
ジャケット・デザインはヒプノシスが担当した。「聖なる館」「プレゼンス」に続いて3度目になる。バーのカウンターで男が紙に火をつけているセピア色の写真を基調としたデザインで、男を6つの視点から見た写真が使用された。すなわち、6種類のジャケットが存在したということであり、発売された時には、ジャケットが見えないようにブラウンの紙袋に包まれた状態で店頭に並び、どのジャケットを購入したのかその袋を開けるまで分からないようになっていた。また、そのブランの紙に水を含ませると発色する仕掛けも施されていた。
パンクやディスコ・ムーブメントが台頭する中、このアルバムはそれに負けないくらいのセールスを記録した。それは周囲の予想を大きく上回るものだったが、この凝ったジャケットが成功につながったのではという見方も多いようだ。
このアルバムでも今までにないレッド・ツェッペリンを作り上げていると思うのだが、今までと違うのは、それがたまたまそうなったに過ぎないということだろう。バンドのリーダー的存在、ジミー・ペイジが方向性を示したわけでなく、半ばジョーンズにまかせっきりにしたため、結果的に新しいレッド・ツェッペリンを表現することになっただけであり、積極的なアプローチではなかったのである。こういった表現もできるのかと、素直に驚きを感じる反面、こんなものは本当のレッド・ツェッペリンではないという意見もの否定できない。
果たして、このアルバムの次はどんなものが生まれたのだろうか。全く想像がつかない。できることならば、この次が見たかった。しかし、1980年9月25日、ジョン・ボーナムが32歳という若さで他界し、このアルバムが実質的にレッド・ツェッペリン最後の作品となった。
ボーナムはこのアルバムに身が入らなかったようだが、ボーナムをしのび、こちらは身を入れて聴くべきか…
1 イン・ジ・イヴニング(Jones, Page & Plant)
曲の最初、ペイジの弓弾きギターとジョーンズのシンセサイザーの音でひとつの世界観を作り出している。また、ペイジはこの曲でゴドレイ&クレームが開発したギズモを使用している。
導入部分はペイジがケネス・アンガーの映画「ルシファー・ライジング」のために制作することになっていたサウンド・トラックから引用している。そのサントラはなかなか完成しなかったことから、アンガー監督から契約を打ち切られ、ボビー・ボーソレイユが後にそれを引き継いでいる。
ボーナムがレコーディングに遅れたり現れなかったりしたため、ドラム部分はジョーンズがドラムマシンを使って考えたものだという。
2 サウス・バウンド・サウレス(Jones & Plant)
ジョーンズのファンキーなピアノが中心となっているこの曲は、ペイジがクレジットに載っていない珍しい曲(ほかに♪オール・マイ・ラヴもペイジの名前がなく、この2曲だけ)。
ペイジの細かなミスが目立つ曲らしい。
3 フール・イン・ザ・レイン(Jones, Page & Plant)
ラテン音楽の雰囲気を作り出しているこの曲は、ペイジが1978年のアルゼンチンでのサッカー・ワールドカップを見ていて思いついたものだという。
ボーナムは、ラテンのリズムのほかにニューオリンズ風のシャッフルビートを刻んでいる。
ペイジはソロでMXR Blue Boxというエフェクターを使用して、ファズの音と同時にオクターブ上の音を出している。
4 ホット・ドッグ(Page & Plant)
カントリーもしくはロカビリーといった雰囲気をもったこの曲で、プラントはエルビス・プレスリーのように歌っている。
曲調に合わせ、ペイジはフェンダー・テレキャスタ-B-BENDERを使用している。
歌詞はプラントがテキサスの女性に惹かれた経験をもとに書かれていて、テキサスの人々に捧げたものだという。
5 ケラウズランブラ(Jones, Page & Plant)
曲名は、曲の最初の部分がメリーゴーランド(carousel)の音楽に似ているということから付けられたという。
彼らの楽曲の中で2番目に長い曲。
ペイジのギターがバッキングに徹していて、ジョーンズのシンセサイザーが目立つという今までにない曲で、プログレッシブ・ロックのようだ。
この曲は3つのパートに分けられる─
①ジョーンズのシンセサイザーを中心にリズム・メロディーが展開するアップテンポ部分
②ペイジのギブソン・ダブルネック・ギターのアルペジオを背景にしたスローテンポ部分
③再びアップテンポとなり、それぞれの演奏がより複雑になっている部分
ペイジがスタジオでダブルネック・ギターを使用しているのはこの曲だけである。
6 オール・マイ・ラヴ(Jones & Plant)
ジョーンズとプラントによるこの曲は、ジョーンズのシンセサイザーのソロが特徴的だ。
歌詞は、1977年5歳の若さで亡くなったプラントの愛息へ捧げられた内容となっている。
ペイジの名前がクレジットされていな珍しい曲でもある(名前がないのは♪サウス・バウンド・サウレスとこの2曲だけ)。
7 アイム・ゴナ・クロール(Jones, Page & Plant)
1960年代のアメリカン・ソウル、特にオーティス・レディングやウィルソン・ピケットといったアーティストから強く影響を受けている曲。
歌詞は、ある魅力的な少女のことを歌ったものではあるが、実際にはペイジの亡くなった愛息への思いがつづられている。ボーナムは、この曲がプラントのベスト・パフォーマンスだ、と述べたという。
この辺りになると、アルバムの存在すら知りませんでした・・・(*_*)
返信削除ロバート・プラントの子ども、生きていれば35歳・・・う~ん・・・
このアルバムが一番聴いていないアルバムです。
返信削除確かにツェッペリンとしては新しい一面をみせたアルバムなんでしょうが・・、なぜか聴きかえす気になれず、数回聴いただけです。
当時の自分はこんなツェッペリン求めていなかったんですが、気持ちに余裕のできた今なら聴きかえしても良いかなって思いますね。
今度ゆっくり聴きかえしてみます。
・・というかこの企画がなかったら正直聴きかえす気になれなかったかも知れません。
あらためてシュリンパーさんに感謝ですね。
みずねこさん
返信削除このアルバム人気ないみたいですからねー。ペイジがあまり好きじゃない発言もしているみたいだし。
聴いていると相当面白いんですけど、レッド・ツェッペリンのオリジナリティーが一番薄いような気がします。
けんさん
ジョーンズが活躍するこのアルバム、嫌いじゃないんですけど、本当に聴き返すきになれませんよね。それはペイジのやる気のなさを感じてしまうからなんでしょうか。
僕自身、こういうことをして久しぶりに聴いた曲が何曲もありました。たまに機械的に有名どころをまとめるのもいいかもしれませんね。
やはりこのアルバムはらしくない感じですかね。今まではあまり感じなかったんですけど、今回聴いてみてそう思いました。
返信削除彼らは出来た物は出すって感じかな。作品が出来上がるまでのプロセスもツェッペリンなんですね。好きですね~こういうスタンス(笑)。
出来上がったものそのまま出すっていうのは正しいかもしれませんね。いろいろアルバムごとに雰囲気が違うのは、アルバムを作るときの気持ちがストレートに反映されているからかもしれませんね。もしかしたら、狙いというよりはたまたまそうなったという方がいいのかもしれませんね。
返信削除このアルバムは、ペイジがやる気のなさ、プラントの悲劇を乗り越えた気持ち、ジョーンズの気合…、みたいなものが集約された結果だといえるのではないかなー