LED ZEPPELIN III (1970)
LED ZEPPELIN
1. Immigrant song
2. Friends
3. Celebration day
4. Since I've been loving you
5. Out on the tiles
6. Gallows pole
7. Tangerine
8. That's the way
9. Bron Y Aur stomp
10. Hats off to (Roy) Harper
めまぐるしい1969年を終えると、4人はスコットランドのコテージ、ブロン・イ・アーというところで休息をした。その時、自然の流れで作曲活動も行われることになるのだが、大自然に囲まれた環境で電気がなかったためにアコースティックギターでの作曲が多く、それが「III」の方向性を決定付けたといわれている。しかし、それは少し飾った話らしく、前作・前々作のペイジのギターを中心としたハードでブルース色が強いイメージを払拭したかったというのが実情のようだ。
発売当初は酷評されて、クロスビー、スティルス、ナッシュ&クロスビー(CSN&Y)の物まねなどとも言われたらしい。しかし、時がたつにつれて、どんどん評価が上がってきているようだ。
よく言われるのが、このアルバムがLed Zeppelin IVへの重要な準備であったということ。確かにそういった面は否定できないけれども、そんな固定観念的な見方をやめて、じっくりと「III」を聴いてみると、より彼らの奥底へと入り込んでいける、と個人的には思っているのだが…
1 移民の歌 (2:27)(Page & Plant)
この曲は10世紀から11世紀にかけて活躍したバイキング、レイフ・エリクソンに捧げられている。アイスランドに生まれノルウェーに移り住んでいたレイフが、新しい入植地を求め航海をするさまを背景に歌われているようだ。
冒頭のノイズはエコーがフィードバックする音。ギターとドラムのリフから始まり、プラントの雄叫びの後、ベースがギターとドラムに呼応してそれが最後までループしていく。
ツェッペリンはあまりシングルをリリースしなかったが、この曲はその数少ないシングルカットされたもののひとつ。B面には♪ホワット・キャン・アイ・ドゥが収められたらしいが、日本でのリリースの際、間違って♪アウト・オン・ザ・タイルズがB面に挿入されて、今ではそれがレア版となっているそうだ。
2 フレンズ (3:56)(Page & Plant)
この曲では擦弦楽器が使用されていて、ジョン・ポール・ジョーンズがアレンジングをしている。
ペイジが弾くアコースティックギターは、CSN&Yの♪Carry on によく似ている。
ボンゴが使用されたりしていて、エスニックな曲。
3 祭典の日 (3:31)(Jones, Page & Plant)
この曲は一度マスターテープがヘッドに詰まって消えかかったところを、なんとか修復して出来上がったものらしい。修復不可能な所はモーグ・シンセサイザーの音を入れて、前の曲♪フレンドとオーバーダビングさせたために、2曲目と3曲目の合間がない。
内容はニューヨークの印象を歌ったものだと、ロバート・プラント自身が述べている。
4 貴方を愛しつづけて (7:25)(Jones, Page & Plant)
この曲はすでに1969年の早い段階にレコーディングされていて、セカンドアルバムに入る予定だったが、♪Whole lotta love などの曲調と合わないという理由から収録されなかったらしい。
ここでのジョン・ポール・ジョーンズはハモンド・オルガンを弾いていて、ベースラインはオルガンのベースペダルで弾いている。
ジミー・ペイジのソロを収録するのには相当苦労したらしく、彼が納得するまで収録が続けられて、結果ロック史上最高といわれるギターソロが生まれた。
歌詞はアメリカのサイケデリックバンド、モビー・グレイプの♪Neverという曲からかなりの影響を受けたもの。ロバート・プラントはモビー・グレイプのファンであったようだ。
また、チョーキングから始まるギターのフレーズは、ヤードバーズの♪New York City Blues(1966) とほとんど同じだ。
ジョン・ボーナムについていうと、バスドラのペダル音を聴くことができる数少ない曲のひとつである(ほかに♪The Ocean、♪The Rain Song、♪Ten Years Gone、♪Bonzo's Montreuxなどでもペダル音を聴くことができる)。
ブルースを基調としている彼らの曲の中で頂点を極める曲といえる。
5 アウト・オン・ザ・タイルズ (4:08)(Bonham, Page & Plant)
この曲の作詞にはジョン・ボーナムもかかわっている。彼らが外へ遊びに行ったときにボンゾが歌った鼻歌を基にしてできた曲。ボンゾは、また、バーへ行くことをよく「Out on the tiles」と表現したという。
0:11 付近で「Alright」、1:23 付近で「Stop」という声が聞こえる。ペイジの声という説があるが、本人は強く否定しているという。
また、この曲は♪Immigrant songが日本で発売される際に、一度間違ってB面に収められた。
6 ギャロウズ・ポウル (4:58)(Traditional -arr by Page & Plant)
この曲の原曲は♪The Maid Freed from the Gallowsという民謡で、1939年にアメリカのブルース・ミュージシャン、レッドベリーによって♪Gallows Poleという曲名で最初に録音された。それをレッド・ツェッペリンがアレンジしている。
最初にアコースティック・ギターから始まり、マンドリン、ベース、ドラムと次々音が混じり合い、その中で最後にエレクトリック・ギターのソロが混じって曲が終了する。
7 タンジェリン (3:12)(Jimmy Page)
この曲でジミー・ページはペダル・スチール・ギターを使用している。
曲は12弦ギターのAマイナーから悲しく始まるが、中盤以降はG D C のメジャーキーで推移してそのまま静かに終了する。
8 ザッツ・ザ・ウェイ (5:39)(Page & Plant)
この曲でもペダル・スチール・ギターが使用されている。
そのほか、アコースティック・ギターとジョン・ポール・ジョーンズによるマンドリン、曲の後半にはロバート・プラントによるタンバリン、ベースとドラムは一切ない。このアルバムを前作・前々作からの脱却と位置づけるならば、この曲がその結果を一番象徴しているのかもしれない。
9 スノウドニアの小屋 (4:18)(Jones, Page & Plant)
この曲のタイトル「Bron-Y-Aur」のつづりは、実は間違っている。正しくは「Bron-Yr-Aur」。後にまた、このウェールズのコテージをタイトルにした曲をアルバム「フィジカル・グラフィティー」に収録されているが、その際は「Bron-Yr-Aur」と正しく題されている。
初期に彼らが作った♪Jennings Farm Bluesを作り直したのがこの曲。海賊版などでその原曲が現れるという。
ジョン・ボーナムはドラムのほかにスプーンとカスタネットを担当していて、ジョン・ポール・ジョーンズは5弦フレットレス・ベースを弾いている。ライブではボンゾがコーラスを担当、ジョーンズはウッド・ベースで演奏したそうだ。
10 ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー (3:42)(Traditional -arr by Charles Obscure)
この曲はロバート・プラントのボーカルとジミー・ペイジのスライド・ギターで構成されている。
ペイジはクレジットで「Charles Obscure(無名)」というペンネームを使用している。
ブッカ・ホワイトの♪Shake 'Em on Downとオスカー・ウッズの♪Lone Wolf Bluesなど古いブルースを基に作られた曲で、題名にあるロイ・ハーパーという人へ捧げられた曲というよりは、むしろ1930年代・1940年代のアメリカ・ブルース・ミュージシャンへ捧げられた曲といえる。
ロイ・ハーパーはイギリスのフォーク・ミュージシャンで、ペイジとも親交があったようだ。ツェッペリンのコンサートのオープニングを務めたり、逆にペイジがレコーディングに参加したりした。また、ハーパーはピンク・フロイドの♪Have a Cigarでリードボーカルを務めている。
あらゆるスタジオで似たような曲が録音され、それらは海賊版として出回っているようだ。オフィシャルリリース同様に、オーティス・ラッシュやエルビス・プレスリーが録音した♪Feel So Bad、ロバート・ジョンソンの♪Traveling Riverside Blues、♪32-20 Blues、スリーピー・ジョン・エスティスの♪Diving Duck Blues、ブッカ・ホワイトの♪Fixin' To Die、エルビスの♪That Alright Mamaなどを基にしたさまざまなバージョンがあるようだ。ライブなどでそれらをメドレーとして演奏したらしいが、オフィシャルリリースである♪ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパーは決して演奏されることはなかったという。
このアルバム大好きです。
返信削除フレンズ、ギャロウズ・ポウル、タンジェリンが特に好きですね。
IVへの重要な準備であったアルバムとして語られていますが、私はIVが最高傑作とは思ってないですし、実際Ⅲのほうが好きです。
というか私はそういう「世間的に見下されてるアルバム」に興味を持ってしまい、何回も繰り返して聴いてしまうんですよね。
逆に「歴史的名盤」とか書かれていると萎えてしまってあまり聴かなかったり・・、偏屈ですよね。
しかしシュリンパーさん、結構掘り下げていますね。
かなり時間がかかってるのでは?
かなり大変かもしれません、レッド・ツェッペリンは…
返信削除大変ですが、いろいろ知って何回も何回も繰り返し聴くと神のような存在だった彼らが、人間らしく感じることができてほんと面白いですよ。
僕もこのアルバム相当好きです。最初に買ったアルバムは「IV」ですが、それよりも断然上です。
いろいろ調べると「III」は結構穴だらけなアルバムで、酷評されるのもしかたないかなぁなんて思ったりするのですけど、その荒っぽさもまた気に入ってしまいました。
さて次はいよいよフォースです。
疲れるだろうなぁ…
休憩入れて別の記事書こうかなぁ…
今回のこの企画で改めて聴きなおすことができて大変ありがたいです。
返信削除この「Ⅲ」は何というか藁に寝て青空の変化を楽しむような居心地の良さがあります。いろいろな評価はあれど根っこの部分ではこれぞツェッペリンという作品かもしれませんね。
やかやかさん
返信削除いいでしょう、コレ。
パクリの原曲を一緒に聴くと、もっともっと楽しめますよ。
いまの季節、風に吹かれながら聴くといいかもしれませんね、このアルバムは─。