麦の穂をゆらす風
THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
アイルランド・イギリス・ドイツ・
イタリア・スペイン 合作
2006年 126分
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
音楽:ジョージ・フェントン
出演:キリアン・マーフィー
ポードリック・ディレーニー
リーアム・カニンガム
「THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY」というタイトルは、アイルランドの伝統歌の曲名を引用したもの。
19世紀後半からアイルランドの独立を掲げるときに、イギリスへの抵抗歌としてよく歌われたという。
この映画の内容は、まさに、この伝統歌の歌詞のように展開していく。
ケン・ローチのリアルな表現に、見ていてつらい場面が多いにある。
そして、そのリアルな表現であるが故に、複雑な思いが頭を駆け巡る。
そこには、明確ではっきりした答えなど一切ない。
それにしても、自由とか権利を手に入れるためには、こんなにも犠牲を必要とするものなのだろうか。
理想を追求し、争い・戦争といったもので人を殺すことは何と無駄なことだろう。
しかし、アイルランドは結果として独立を勝ち取った─
つまり、その犠牲は無駄ではなかった…
しかし、犠牲者・あるいはその家族の立場になったとき、果たして“この犠牲は無駄ではない”とはっきりと述べることができるだろうか。
ひとつの答えを導き出すのは本当に難しい。
映画の中で、1921年のイギリス・アイルランド条約に反対か賛成かを議論する場面が、まさにそれを象徴している。
一人一人の若者が共通の理想を求め議論をするが、その先にあるのはなぜか対立…
…画面の中の若者たちは本当に議論しているようなリアリティー
この場面には決められたセリフなんてないように思ってしまう。
映画の始まりでは、ジョージ・フェルトンの音楽はやはり素晴らしいなどと思っていたのが、終盤になるにつれて、周りのものに一切感覚が向かなくなるくらい内容に引き込まれ、考えさせられてしまった。
この映画でケン・ローチが主張したいことなど何もないのかもしれない。
この映画が何なのかを見出すのは、あくまでも提示された我々であって、100人が見たら100通りの意見が出るであろう。そして、残念ながら100人全員が戦争を否定することはないであろう。
戦争は永遠になくならないのだろうか─。
アイルランドとイギリスは 隣国同士なのに 長い対立で 不幸な歴史ですね。
返信削除アイルランドは 自然や 妖精伝説などで 興味があります。音楽などは大好きです。機会があらば見ますね。
日本も韓国、北朝鮮、中国とはとても仲がよいとは言えないわけで、世界では不思議と隣り合う国というのは仲が悪い傾向にあるように思います。まぁ仲が良ければ、隣り合っているのだから国境が必要ないですよね。
返信削除アイルランドの映画は、その時代背景から社会的・歴史的な作品が多くて、その内容も非常に優れていると思います。個人的には好きな作品が多いです。この映画の監督はケン・ローチはイギリス出身で、自国の負の部分をよくあそこまで冷たく冷静に描けるなぁと感心してしまいます。
見ていてつらい部分がたくさんありますが、どんどん引き込まれていくと思いますよ。