2007年12月1日土曜日

鈴木荘の思い出 ~キノコ~

土壁というのは日本の伝統建築様式らしいのですが、今の世の中、土壁での新築というのはほとんどないだろうし、土壁の古い住宅も少なくなっているだろうから、土壁の存在自体が信じられないという人も多いのではないでしょうか。

僕も、壁からキノコが生えているのを見るまでは、土壁の存在すら頭にありませんでした。

築30年、いや35年だったか
僕が以前住んでいた歴史あるアパート鈴木荘
その風呂場に、突然
真っ白いきのこが生えていたのです。

もしかして、この家、土壁?

壁に塗られたモルタルが少しだけひび割れていて、そこからキノコが1本だけ生えていて、たまに土がぱらぱらと落ちるのを見ながら─

土壁だ!

と確信しました。

キノコが一度生えると菌糸が根付くのか、毎年のように生えてきました。冬場に枯れてなくなり─、少しだけ安心していると─、夏にまた少し違う所から生えてくる…それが毎年のように続きました。

土壁といっても、まさかモルタルで塗られている内部がすべて土で埋め尽くされているわけないだろう、と思っていたのですが、土壁というのは本当に土だけで成り立っているのだと知る日がやってくるのです。


その年のキノコは、例年に比べて高い位置から生えていて、真っ白だったものが多少くすんだ色をしていました。色味からもすぐに元気がないというのは分かったのですけれど、やはり、枯れてなくなってしまうのも早く、冬を待たずに奇麗にキノコがなくなってしまいました。もしかして、これでキノコが生えてこなくなるのかも─と淡い期待と、微妙な寂しさを感じました。
キノコがなくなって数日後の夜─
風呂に水を入れて、ガスでお湯を沸かしている間を利用して外に買い物に出かけました。20分ほどで帰宅したのですが、家の前まで来ると消したはずの風呂の明かりが付いているかのように、風呂の窓ガラスが明るく照らされていました。
あれ?何か嫌な予感が…
おそるおそるドアをそっと開けて、キョロキョロしながら玄関に入り─
すぐさま風呂をのぞいてみると─
風呂の壁に大きな穴が開いていて、隣の住人の風呂場からの明かりで、僕の風呂場が明るく照らされていたのでした。
風呂釜の中にはお湯の代わりに、大量の土が入っていました。
やっぱりこの家の壁は土壁だったんだと、そのときやっと知ることができたのです。

さて、その惨状から一夜明け─
大家さんがすぐさま駆けつけて、土を奇麗に処理して、風呂も奇麗に掃除してくれました。また、大きな穴の開いた壁一面に、分厚い木の板を張り巡らし、当面の応急処置をしてくれたのです。キノコはもう二度と見ることはありませんでした。
応急処置の板の壁、その後、数年同じ状態で、結局僕が引っ越す間際までその状態でした。もしかしたら、いまも同じかもしれません。万が一、鈴木荘がまだ生き残っていたらの話ですけど─

2 件のコメント:

  1. 風呂釜に土 すごい体験ですね。キノコをみるたびに 鈴木荘を思い出すんでしょうね。
    私も貧乏長屋に住んでいたとき ぴちゃぴちゃという 音が台所から聞こえたので みにいったら イタチが 鳥のから揚げにむしゃびりついて きれいに骨だけ残しているのを目撃しました。

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  2. シュリンパー2007年12月4日 6:18

    泥棒イタチもすごいですね
    母親が農作業中に野生のニホンカモシカとばったり出会い、目と目が合ってしばらく動けず、ふとした拍子に2人(2匹?)とも逃げたという話をしていました。
    ニホンカモシカといえば国の天然記念物、野生でそうそう見ることはできないと思います。だから、多くの人が信用しませんでしたが、母は本当だと強く主張していました。だから今となっては本当だろうと思っています。
    生きていると、おかしなことはたくさんありますよね。

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