2007年10月9日火曜日

音の記憶

アメリカの神経科医であり作家のオリバー・サックスが書いた「火星の人類学者」という本の中に、脳に障害を負ってしまった青年グレッグの実話が載っている。
画像火星の人類学者
脳神経科医と7人の奇妙な患者

オリヴァー サックス
(1997)

1960年代後半から70年代に、ヒッピームーブメントの中に飲み込まれたグレッグは、宗教団体に参加すると瞑想や精神世界というものにのめり込んでいき、脳に腫瘍ができとことも知らずに瞑想にふける毎日。しかし、さすがに彼の異常に気がついた教団側が彼を両親の元に帰すが、すでに彼の病状はかなり悪化しており、脳からグレープフルーツ大の腫瘍が摘出された。一命は取りとめたとはとはいえ、彼の記憶システムは奇麗に取り去られてしまった。
グレッグの70年代の記憶はすべて無くなって、同時に極度の健忘症になってしまい、現在進行で起こっている出来事も1分と記憶していることができない。
しかし、60年代の記憶はかなり残っているらしく、特に60年代後半の音楽の記憶はかなり鮮明だ。1969年のセントラル・パークでのグレイトフル・デッドのコンサート、フィルモア・イーストでの数々の名演、彼の中では今でも過去が現在のような感覚らしい。
物事を1分と記憶できないために、しっかりとした会話も5分と持たないらしいのだが、60年代後半の音楽の話をすると、ずっと会話が続く。さらに、文章にメローディーやフレーズをつけて教えると、新しい物事を全く記憶できないはずのグレッグが、長い時間を置いてもそれらの文章を思い出すことができるのだという。
音の記憶とは普通の記憶とは違うのだろうか。
��991年、グレッグは久々にグレイトフル・デッドのコンサートを見いく。彼の記憶力の回復、大きな願いが込められていた─…、果たしてグレッグの記憶はどうなったのか!?

気になる方は自分で本を読んでみてください。グレッグの物語を含め7つの興味深い実話が収められています。

2 件のコメント:

  1. 音の記憶 たしかに その音楽を聴くと 当時が蘇ることあります。私の場合は 60代後半 70年代が 脳の中心にあります。彼は 一体どうなったんでしょうか? 気になります。

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  2. シュリンパー2007年10月10日 10:36

    まりさん、こんばんは
    結末はまりさんのブログに書き込んでおきましたよ。
    本の中には7つの物語があって、グレッグの話は「最後のヒッピー」というタイトルです。
    残念ながら、僕がまだ生まれていない時代のことなので、グレッグが熱狂する本当の気持ちを半分しか理解できませんでした。
    同時代が中心であったまりさんなら、もっと深く理解できるかもしれませんよ。文庫などにもなっていますから、読んでみてはどうでしょう。

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