音楽はあまりにも我々に優しすぎて、時にそれが魔物となり、授業で音楽を聴きながら気持ちよい眠りにつくことが多々…特に声が低い教授にあたってしまうと、もはや周りの全ての音は子守唄。
黒板に、レオシュ・ヤナーチェク、とだけ書いて、あとは一切文字で表記しようとせずに、小声で永遠とヤナーチェクという音楽家のことを説いていくのだが、本当に何を言っているのか聴こえない。あまりにも聴こえないために、ちょっと怒り交じりに、教授が淡々と講義している最中に一番前の真ん中の席に歩いていき、鋭いまなざしでじーっと教授を見つめて講義を受けた。
すると、その時の講義では珍しくビデオを流し始めた。聴こえない説明を聞き流しながら、ビデオに集中しようとするのだが、そのビデオ映像は教授自らハンディーカムで撮影したものであるらしく、ひどいぶれようで非常に気持ち悪くなってしまった。とても全て見ていられない─周りは暗くしてビデオを見ているから寝るには最適なのだが、船や電車に酔った感覚でとてもじゃないけれども眠ることができない。授業を抜ければいいものを、なぜか意地のように最後まで居てやろうという気持ちになっていて、耐えに耐えて揺れるヤナーチェクの祖国チェコの映像を眺めていた。
頑張ったかいがあったのか、突然、安定した映像に切り替わった。待ちに待ったプロフェッショナルの映像。
その映像は、チェコの民俗舞踊。足のひざから下をぶるんぶるん振るのが特徴的なそのダンスを、非常に面白いと思ったのは、決して一番前のど真ん中にいた自分だけではないはず。
講義はよく聞こえなくても、流れから、ヤナーチェクはこれらチェコの民俗的な要素をクラシック音楽に取り入れていったということが想像されて、ビデオのあとに流された音楽を非常に興味思って、そして納得しながら、そして非常に楽しむことができた。
ヤナーチェク: ラシュ舞曲集 タラス・ブーリバ シンフォニエッタ JANACEK: Lachian Dances / Taras Bulba / Sinfonietta |
大きな声を出すことが苦手でも、チェコに自ら取材しに行くくらいの情熱があれば、音楽の素晴らしさを十分に伝えることができるということであろうか。
その授業で紹介される音楽は本当に素晴らしいとは思ったものだが、その授業は決して好きになれるのもではなかった。
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