楽器を弾く前にはチューニングが不可欠です。とくにグループで演奏する場合、しっかりと音を合わせないと、音での意思疎通ができません。ピッタリ調和させたいところ─、不協和音を出したいところ─、微妙な音のずれがあると音楽が意図するところを表現できないのです。
オーケストラのコンサートでは演奏する前に、オーボエやバイオリンなどが出すA(ラ)の音に全員が合わせます。微妙にずれていたものが徐々に調和して最後には1つの塊になる瞬間、大変気持ちがいいものです。
一般的にギターの6本の弦は6弦=E(ミ)、5弦=A(ラ)、4弦=D(レ)、3弦=G(ソ)、2弦=B(シ)、1弦=E(ミ)という音階になっています。正確にチューニングするのは結構、技術や熟練度が必要です。弦楽器には張力があるために何度も反復してチューニングをしなければならず、さらに演奏最中にも音程が狂るうときがあるので、そのたびに微調整をしなければなりません。どんなに超絶技巧を用いてギターを弾いたとしても、正確な音で1音1音を丁寧に気持ちを込めて弾いた音楽には敵いません。チューニングとは楽器の命といえるでしょう。
また、ギターでは、EADGBEという通常のチューニングとは違った変則チューニングというものが存在します。DADF#AD…オープンDチューニング、DGDGBD…オープンGチューニング、DADGBE…ドロップDチューニング、DADGAD…モーダルDチューニング、DADDAD…ユニゾンDチューニングなど様々な変則チューニングがある。奏者によっては独自のチューニング方法をもっていて、ウィンダム・ヒルのギタリスト:マイケル・ヘッジスなどは曲ごとにチューニングを変えたというし、パット・メセニーなどはステージにたくさんのギターを置いているのですが、それらはトーンなどの変化と同時にチューニングも変えてあるのです。ポール・サイモンやジョニ・ミッチェルも変則チューニングを多様したらしいし、クラシックギターの楽曲でも変則チューニングの曲は存在します。
試しに変則チューニングをしてみると、今までにない音色を手にできたような感動をおぼえるはずです。そして新たなイメージが沸いてくることでしょう。ただ、変則チューニングをすると張力バランスが崩れるので、チューニングがさらに難しくなります。調和された音を出すのに一苦労、出せたとしてもすぐに音がずれてきて、またチューニング…それが何度も繰り返されることでしょう。そのうち変則チューニングに楽器が慣れてくると音は安定し、ギターの新世界が見えるかもしれません。ただし、それをまた通常チューニングにしようとすると、調和させることにまた一苦労することでしょう。
音楽のはじまり、それがチューニングだといえるかもしれません。
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