走り始めてちょうど1ヵ月になるだろうか。徐々に膝や腰の痛みを感じなくなってきた。当初1kmほどで息絶え絶えだったものが、きのうはようやく9kmをノンストップで走り切った。目標にしていた一日10kmはまず無理だと思っていたが、あとわずか。たかがあと1km、されど1km、焦らず伸ばすか。
道中、疲労の気を紛らすかのように、音楽を聴きながら走っていた。その際、1曲目は必ずジャクソン・ブラウンの「孤独のランナー」─
Running on empty
通勤の行き帰り、背負っているかばんの重みも、この曲のフレッシュさで一蹴していたわけだ。
そんなある日…。太陽が照りつける中、猛暑日なんぞに負けないぞと「孤独のランナー」を聴きながら勢い勇んで家を出た。正直、足腰の痛みはかなりのもので、走ることへの疑問を感じ始めた時期。簡単に日差しに負けてしまいそうに思えたものが、不思議とそれまでにないくらいの体の動き。自宅から駅まで3.5km、いつもなら3度はストップしていたものが、1ストップで到着。
さあ、駅のトイレで汗だくの服を着替えて、まさにフレッシュな気持ちで出社だ!と満たされた気持ちで背負ったかばんを前方のほうに下ろすと、かばんのチャックが全開で、走る際に邪魔になると思い詰めていた財布・携帯・眼鏡などほとんどのものが、そこには無かった。空っぽのままに走っていたわけだ。
すぐさま、また3.5kmを走る。財布も、携帯も、眼鏡も、何も道に落ちてはいない。諦めのままに、とりあえず、自宅へ戻り、通帳を手に銀行へ。口座を止めて、携帯電話もストップ、あとは交番へ行くしかなかった。
自宅を出て1時間ほど経っただろうか。もう丸一日動き回った気分だ。最寄り駅の交番へ落し物の届け出をして、あとは待つだけ。しかし、なんとそこに落としたはずの財布と眼鏡が届けられていた。奇跡というほかない。届けてくれた人にただただ感謝、後日、直接会って感謝とそれなりのお礼が出来た。その誠実な人の話によると、かばんから次々に物が落ちるのを目撃して、大きな声を掛けてくれたらしいのだが、不幸にもその時「Running on empty」に夢中になっていた自分はその善意を完全無視してしまったわけだ。からっぽにもほどがある。
その後、通勤時のランニングと通勤時の歩きながらのウォークマンは厳禁にした。自分の時間のなかで、走る時間をつくり、そのなかでウォークマンを聴きながらランニングを続けている。相変わらず背中にはかばんを背負っているが、その中に入っているのはタオルとカメラだけ。なるべく空っぽに─。ちなみに、もうランニング時のジャクソン・ブラウンはやめにした。その前向きな歌詞とフレッシュなメロディーは、今の自分には不釣り合いだから。
RUNNING ON EMPTY / JACKSON BROWNE
Looking out at the road rushing under my wheels
Looking back at the years gone by like so many summer fields
In sixty-five I was seventeen and running up one-o-one
I don't know where I'm running now, I'm just running on
Running on running on empty
Running on running blind
Running on running into the sun
But I'm running behind
Gotta do what you can just to keep your love alive
Trying not to confuse it with what you do to survive
In sixty-nine I was twenty-one and I called the road my own
I don't know when that road turned into the road I'm on
Running on running on empty
Running on running blind
Running on running into the sun
But I'm running behind
Everyone I know, everywhere I go
People need some reason to believe
I don't know about anyone but me
If it takes all night, that'll be all right
If I can get you to smile before I leave
Looking out at the road rushing under my wheels
I don't know how to tell you all just how crazy this life feels
I look around for the friends that I used to turn to
to pull me through
Looking into their eyes I see them running too
Running on running on empty
Running on running blind
Running on running into the sun
But I'm running behind
Honey you really tempt me
You know the way you look so kind
I'd love to stick around
But I'm running behind
Running on
You know I don't even know what I'm hoping to find
Running behind
Running into the sun but I'm running behind
車輪の下をすり抜けていく道路を眺めながら
あの夏の草原のように過ぎ去って行った年月を思い返す
��5年 17歳だった僕は
��01号線を北へ向って走っていた
今 僕はどこを走っているかも分からず
ただ走り続けている
走り続ける 空しく走り続ける
走り続ける 訳も分からず走り続ける
走り続ける 太陽に向って走り続ける
それなのになかなか追いつけない
愛を守り続ける為にはどんな事でもしなくちゃいけない
でもそのことと生き残る為にしなくちゃいけない事を
取り違えてはいけない
��9年 21歳になった僕は道路を僕の人生と呼んだ
あの道路はいつ僕の道路の方に向きを変えたのだろう
走り続ける 空しく走り続ける
走り続ける 訳も分からず走り続ける
走り続ける 太陽に向って走り続ける
それなのになかなか追いつけない
どんな人でも どこにいようと
信じる理由が必要なんだ
僕は自分のことしか知らない
一晩中かかろうといいじゃないか
もし僕が発つ前に君を笑わせることが出来るなら
車輪の下をすり抜けて行く道路を眺めていた
この狂った人生を君に上手く話す事が
僕には出来そうもない
ここから引きずり出して欲しくて
かつては振り向けばそこにいた友の姿を
捜し求める その彼らもまた走り続けている
走り続ける 空しく走り続ける
走り続ける 訳も分からず走り続ける
走り続ける 太陽に向って走り続ける
それなのになかなか追いつけない
ハニー 君はとても魅力的だよ
自分を優しく見せる術を心得ているんだね
君と一緒にいたいけど僕は
追いかけなくてはいけないんだ
自分が何を求めて走り続けているのかも
分からなくなってしまった
太陽に向って走り続けているけど
なかなか追いつけない
初めまして、ジャクソン・ブラウンのアルバムで最近のライブは除いて一番好きかなぁ。因みにリュックの中身がエンプティでランニング。正にランニング・オン・エンプティだったってことですね。(笑)失礼しました。
返信削除はじめまして!ロック仙人TFさん。
返信削除正直、ジャクソン・ブラウンはあまり聴きません。でも、この曲とアルバムのジャケットはかなり好きです。前にベスト盤を聴いてみたものの、なんかジャケが非常に気に入らずに、それ以来疎遠になっているのかも。ベストで済まそうという横着への天誅ですな。
エンプティーな文章楽しんでもらって幸いです。
歌の題名のとおりになっちゃうなんて!
返信削除誠実な人が交番に届けてくれてよかったですね。世の中捨てたもんじゃないと思える出来事ですね。
この曲なら軽快にランニングできそう!
Lilyさん、ども{%パーwebry%}
返信削除快適にランニングできますよ。
もうすべてを忘れてまっしぐら─
何もかも捨て去り我が道をゆく…
どんなに孤独であっても、常に誰かのお世話になっている。せめて、社会貢献でも考えながら走ろっかな{%笑いwebry%}