2010年8月6日金曜日

Like A Rolling Stone

 満員電車の中、ウォークマンをから流れてくる音楽をじっと聴きながら、おしつぶされそうになる気持ちを耐え忍ぶ。きょうの支えとなった音楽は、「ライク・ア・ローリング・ストーン」だった。

Michael Hedges - Like a Rolling Stone


 故・マイケル・ヘッジスが歌う、ボブ・ディランのカバー。ロック調の本家本元とは全く違って、アコースティックであり、フォーク的な「ライク・ア・ローリング・ストーン」。個人的にはこのカバーバージョンの方が好みだ。カバーする側のカバーした曲への愛情を非常に感じるからだ。
 参考までにいうと、ディランの原曲はローリング・ストーン誌が選ぶオール・タイム・グレイテストソンング500で1位になっている。ボブ・ディランはノーベル賞にノミネートされ、ピューリッツァー賞を受賞しているわけだから、特別驚くことではないか─。
 how dose it feel? - like a rolling stone 自分の耳では、残念ながら、ほんの一部分だけしか聴き取れない。何をどう感じるのかと問いかけているのか…そもそも、ローリング・ストーンというのは何であったか…
 A rolling stone gathers no moss. という英文のことわざを習った記憶がうっすらと蘇る。ころがる石は苔をつけない─つまり、…常にフレッシュだということだったかな?と直感的に思ったものの…

rolling stone  [rólling stóne]

―【名】【C】 ころがる石; 住所[職業,仕事(など)]を次々に変える人.

用例
A rolling stone gathers no moss. 《諺》 ころがる石にはこけが生えない 《★【解説】 商売変えは損あって益がない; 絶えず恋人を替えている人は真の愛が得られない[結婚できない]; 《米》 ではまた絶えず活動している人はいつも清新だの意に用いる》

研究社 新英和中辞典より
 
 
 優柔不断はよくないという意味とフレッシュ!という意味が含まれている。つまり全く逆の意味が同じ言葉に内包されている。どうやら、イギリスでは否定的に用いられていて、アメリカでは肯定的に使用されているという。これは、イギリスでは伝統を重んじて、アメリカでは新しいものが喜ばれるという文化的な違いの表れだということだが、アメリカ出身のボブ・ディランはやはり、肯定的なローリング・ストーンを歌っているのだろうか。

Once upon a time you dressed so fine
You threw the bums a dime in your prime, didn't you ?
People'd call, say, "Beware doll, you're bound to fall"
You thought they were all kiddin' you
You used to laugh about
Everybody that was hangin' out
Now you don't talk so loud
Now you don't seem so proud
About having to be scrounging for your next meal.

昔、君は奇麗な服を着て
良いときは乞食にコインを投げただろう。
人が「気をつけろ、落ちるよ」と言っても
冗談だと思っただろう。
前は笑っていた
ブラブラしている人を。
今はそんなに声をあげない
今はそんなにプライドも高そうでない
次の食事をかき集めるときにはね。


How does it feel
How does it feel
To be without a home
Like a complete unknown
Like a rolling stone ?

どんな気分だい?
どんな気分だい?
家がなくて
全く知られていない人のように
転がる石ころのようにいるのは


You've gone to the finest school all right, Miss Lonely
But you know you only used to get juiced in it
And nobody has ever taught you how to live on the street
And now you find out you're gonna have to get used to it
You said you'd never compromise
With the mystery tramp, but know you realize
He's not selling any alibis
As you stare into the vacuum of his eyes
And say do you want to make a deal?

一番良い学校にいったね、淋しいお嬢さん
そこでは甘やかされただけだった
路地で生きるためのすべは教えてもらえなかった
だけど今は、これに慣れないといけないことに気づいてね
謎のトラップには妥協はしないと言ってた
だけど今は気づいたろ
アリバイを売ってはくれない
彼の空虚な目を見つめながら
取引をしようと言いながら。


How does it feel
How does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone ?

どんな気分だい?
どんな気分だい?
ひとりぼっちで
家路もなく
全く知られていない人のように
転がる石ころのようにいるのは


You never turned around to see the frowns on the jugglers and the clowns
When they all come down and did tricks for you
You never understood that it ain't no good
You shouldn't let other people get your kicks for you
You used to ride on the chrome horse with your diplomat
Who carried on his shoulder a Siamese cat
Ain't it hard when you discover that
He really wasn't where it's at
After he took from you everything he could steal.

ジャグラーとピエロ達のしかめ面を見るために振り返ったことはなかっただろう
皆降りてきて君のために手品をしてくれたとき
それがダメだとは分からなかっただろう
他人に楽しさを任せてはいけないこと
前は君の外交官とクロムの馬に乗っただろう
彼の肩にはシャム猫を乗せて
彼がいたのは違う場所と分かったときは大変だっただろう
彼は、盗めるものはすべて持っていったね


How does it feel
How does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone ?

どんな気分だい?
どんな気分だい?
ひとりぼっちで
家路もなく
全く知られていない人のように
転がる石ころのようにいるのは


Princess on the steeple and all the pretty people
They're drinkin', thinkin' that they got it made
Exchanging all precious gifts
But you'd better take your diamond ring, you'd better pawn it babe
You used to be so amused
At Napoleon in rags and the language that he used
Go to him now, he calls you, you can't refuse
When you got nothing, you got nothing to lose
You're invisible now, you got no secrets to conceal.

先塔の上のプリンセスと奇麗な人たち
彼らは飲んで、すべて大丈夫だと思っている
貴重なプレゼントを受け渡し
だけど今はダイアモンドの指輪を持っていった方がいいね、質屋に
昔は笑っていたのに
おんぼろ服のナポレオンと彼の言葉に
彼のところに行ってこい、彼が呼んでる、断れないだろう
何もないときは、何も失えないのさ
君は透明なんだ、隠す秘密もないのさ。


How does it feel
How does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone ?

どんな気分だい?
どんな気分だい?
ひとりぼっちで
家路もなく
全く知られていない人のように
転がる石ころのようにいるのは



 決して、良いイメージで描かれていないその内容。しかし、最後は不思議と肯定的なイメージを持ってしまった。自由、万歳、といった感じか。そんな単純なものではないかもしれないけれど─。
 ローリング・ストーンというものは、なかなか奥深い。
 ボブ・ディランが1965年に「ライク・ア・ローリング・ストーン」をリリースする遥か前に、マディ・ウォーターズが1948年に「ローリン・ストーン」という曲でローリング・ストーンを歌っている。あのローリング・ストーン誌の名前の由来といわれる有名な曲。その表現は、「ライク・ア・ローリング・ストーン」と非常に共通しているものがある。

♪Rollin' Stone
Well, I wish I was a catfish,
Swimmin in a oh, deep, blue sea.
I would have all you good lookin women,
Fishin, fishin after me.
Sure 'nough, a-after me.
Sure 'nough, a-after me.
Oh 'nough, oh 'nough, sure 'nough.

I went to my baby's house,
And I sit down oh, on her steps.
She said, "Now, come on in now, Muddy."
"You know, my husband just now left."
"Sure 'nough, he just now left."
"Sure 'nough, he just now left."
Sure 'nough, oh well, oh well.

Well, my mother told my father,
Just before hmmm, I was born,
"I got a boy child's comin,"
"He's gonna be, he's gonna be a rollin stone,"
"Sure 'nough, he's a rollin stone,"
"Sure 'nough, he's a rollin stone,"
Oh well he's a, oh well he's a, oh well he's a.

Well, I feel, yes I feel,
Feel that I could lay down oh, time ain't long.
I'm gonna catch the first thing smokin,
Back, back down the road I'm goin.
Back down the road I'm goin.
Back down the road I'm goin.
Sure 'nough back, sure 'nough back.


なまずだったらいいのにな
青い海の底 深く深く 泳ぐ
おまえはいい女
口説き落としたい
俺を釣り上げてくれ
確かに、そう、確かに

彼女の家に行ったんだ
階段に座ってさ
「おいで、マディ。主人は今出て行ったわ」
確かに、そう、確かに

俺の母親は父親にこう言った
俺が生まれる前のことさ
「男の子が生まれるわ。
けど、この子は流れ者になるわよ、きっと」
確かに、そう、確かに

俺は転がる石ころ

寝転がってるとさ 確かに感じる
俺の人生そんなに長くない
初めて煙草吸った時みたいなあの感覚を捕まえにいくぜ
だから
俺を道路に戻してくれ
俺は行くからよ
俺を道路に戻してくれ
俺は行くからよ
確かに、そう、確かに

 決してよいイメージではないローリング・ストーンではあるが、それはそれで悪くないだろう、といった不思議な肯定と説得力がある。まさか、これら楽曲がことわざの本来の意味を変えてしまったとまでは思わないけれども、肯定的なローリング・ストーンというものも、決して真新しいということだけでは済まされない深い意味が含まれているようだ。
 斯く言う自分も、転がり続けているようなものなのだが、それなのにコケやカビまでもがこびりつき、さらには、どんどん摩耗していっているような…「ライク・ア・ローリング・ストーン」を聴きながら、耐え抜こう♪

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